最新記事
BOOKS

ハン・ガン、ノーベル文学賞受賞後初のエッセイ発表 記者会見を開かない理由も明かす

2024年10月16日(水)21時38分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

新作エッセイ「羽」を発表

こうしたなか、ハン・ガンはノーベル賞受賞後初の新作としてエッセイ『羽』を発表した。

これは、彼女が同人として参加しているメルマガ形式のオンライン同人誌「毛玉」の15日夕方に発行された第3号に掲載された。900字を少し超えるこのエッセイでは、彼女は母方の祖母との思い出を振り返っている。


「ふと祖母を思う時、一番最初に思い浮かぶのは私を眺める顔だ。愛のこもった目でそっと私の顔をのぞき込み、手を伸ばして背中を軽くたたいた瞬間。その愛が実はあなたの一人娘に向けられたものだということを私は知っていた。そのように背中を軽くたたいた後は、いつも繰り返しおっしゃっていましたから。お母さんに本当に似ているね。目が全く同じだ」

デビュー作を発表した20代の頃のインタビュー

一方で、ハン・ガンが作家としてデビューしたばかりのころのインタビューが、ネットに掲載されて注目を集めている。

韓国の公共放送EBSは、ユーチューブチャンネル「EBS教養」に「ノーベル文学賞受賞者の20代の頃の旅行はどんな感性ですか。作家の小説「麗水(ヨス)の愛」の足跡を追って」というタイトルの動画を掲載した。

映像はハン・ガンが麗水港、突山島、南山洞など麗水のあちこちをめぐりながら「麗水の愛」をどうして書くようになったのか、どんな意味を持つのかを話す内容だ。『麗水の愛』は1995年に出版されたハン・ガンの短編集で、彼女の初の単行本だ。

彼女は小説を書くためにわざわざ麗水を訪ねてきたわけではなかった。たまたましばらく滞在した麗水で、彼女は強いインスピレーションを得たという。そして故郷の麗水を離れてソウルで暮らす二人の若い女性──故郷が果てしない懐かしさの対象である一人の女性と、果てしない傷として記憶する一人の女性を思い出し、二人をモチーフに「麗水の愛」を執筆したという。

ハン・ガンは、麗水が小説の中の背景になった理由について「麗水という名前のためだと言える。美しい水(麗水)と言って地元の名前になったり、旅人の愁いという抽象的な意味になったりもする。 それで麗水を選んだ」と語っている。

この20代のハン・ガンを取材した映像はユーチューブで人気急上昇動画となって注目された。 映像は公開15時間後の16日現在、再生数24万回を突破し、1200個以上のコメントが付けられている。

展覧会
奈良国立博物館 特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」   鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 5
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 6
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 9
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中