『イカゲーム』が素人参加型バラエティーに...悪趣味で軽薄だが、見事に視聴者ニーズをつかんだ仕上がり
The Money’s in Reality TV
それに対し、『チャレンジ』は真の狙いを全く隠そうとしない。これは、憎悪に満ちた視聴者に向けた憎悪に満ちた番組だ。巨額の賞金を目当てに参加した人たちの圧倒的大多数は、徹底して侮辱的な扱いを受ける。
あるエピソードでは、参加者たちは、割れやすいカルメ焼きの「型抜き」ゲームを課される。円形や三角形や星形や傘の形など、指定された形に型を抜くのだ。1人の参加者は極度のストレスで体調を壊し、うっかりカルメ焼きを割ってしまう。
すると次の瞬間に、その参加者は「射殺」される。本当に殺されるわけではなく、胸の血のりが破裂するのだが、その人物はほかの参加者が型抜きの作業を続ける間、死んだふりをしてその場に倒れているよう指示されている。
『チャレンジ』は、視聴者の「他人の不幸は蜜の味」という感情に訴えかける。オリジナルのドラマの設定だけを利用して、ひたすら他人を見下す感情をかき立てるのだ。
命懸けの脱出ゲームに参加する人たちは、どうして巨額の賞金を欲しがり、そのためにほかの参加者たちの裏をかこうとするのか──。オリジナルのドラマのようにこの点を掘り下げなければ、視聴者の本能的衝動を満足させるための見せ物にしかならない。
こうした作品が出来上がったことは意外でない。エンターテインメント業界では、成功したコンテンツは全て、利用できるだけ利用されるのが当たり前になっている。そのとき真っ先に犠牲になるのは、オリジナル作品の微妙なニュアンスや一貫性だ。
『007』も商魂の犠牲に
アマゾンプライム・ビデオの新作『007 クイズ!100万ポンドへの道』も同様のパターンと言える。
アマゾンが2021年に映画製作大手MGMを買収した大きな理由の1つは、主人公ジェームズ・ボンドでおなじみの『007』シリーズの権利を獲得することにあった。そして、同社がその権利を活用して最初に送り出したのは、新作映画ではなく、もっと低コストで制作できるコンテンツだった。そう、リアリティー番組である。
『100万ポンドへの道』では、9組のコンビが賞金を手にするために世界を駆け回って冒険に臨む。「ザ・コントローラー」と呼ばれる陳腐な悪役の親玉(俳優のブライアン・コックス)が薄暗い部屋に陣取って参加者の奮闘ぶりを見守り、参加者がプレッシャーに負けて失敗すると満足げな態度を見せる。
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