「みんな踊り出したくなる」──伝説の振付師ボブ・フォッシーの名作『ダンシン』が戻ってきた
Bob Fosse’s Dancin’ Comes Home
どうすれば1978年の作品を2023年の観客に楽しんでもらえるか。最初はシレントも自信がなかった。でも「ボブはいつも時代の先を行っていた。新しいテクノロジーに通じ、映画もやっていた。その彼が生きていたら、どうするだろう? 何度も自分に、そう問いかけたよ」。
オリジナルの『ダンシン』はバーレスク仕立てで、司会者が曲名を紹介し、一曲ごとにダンサーが入れ替わるスタイルだった。でも、とシレントは言う。「それじゃ今は通用しない。だからもっと映画的な構成にしようと考えた」
それでフォッシーの手がけた映画を再チェックし、話に流れをつけ、新たな作品に仕上げた。結果、「どこでも勝負できる」ミュージカルに仕上がったという。
そのとおりだが、「ダンサーによる、ダンサーのための」作品という根っこの部分は変わっていない。
ダンサーが主役を張れることはめったにない、と言ったのはヤニ・マリン。普段は集団で、舞台の後ろで踊るだけで、「何かを語り出す人間」として物語や主役に絡むことはない。でも、『ダンシン』ではダンサーが主役だ。
「幸いにして、私に与えられた今回の役では自分自身を表現できる」とマリンは言い、フォッシーの振り付けを学び、『ダンシン』のオリジナルに出ていたシレントの演出で踊れるのだから、これは最高の経験になると続けた。
マリン(『ウエストサイド物語』の09年版ブロードウェイ公演では準主役級のアニタを演じた)に言わせると、シレントはフォッシーの振り付けを異次元で理解しており、それは肌で、体で感じ取るしかないものだった。
やはり今回のリバイバル版に起用されたダンサーのナンド・モーランドも、シレントについて「とにかく熱い男で、この作品のオリジナル版に出て、フォッシーの振り付けを体で知っている」と評した。
「(45年前のオリジナル作品当時の)感覚が今も生きていて、彼は自分で踊って手本を見せてくれた。ものすごく感動したよ」
モーランドは、『ウエストサイド物語』の20年版ブロードウェイ公演や『屋根の上のバイオリン弾き』の全米ツアーで知られる男。彼は以前から、フォッシーの「ファンクで曲芸的な」スタイルに刺激を受けてきたと言う。