(ネタバレ注意)グロくて泣ける『イカゲーム』、従来のデスゲームとの違いは?
A Korean Drama That Is Not for the Fainthearted
『イカゲーム』にはもう1つ、ほかの作品と大きく違う点があり、これが見る人の情緒を強く揺さぶる展開を可能にしている。登場人物たちは自分の意思でゲームへの参加を決めなければならないのだ。
第1のゲームで大勢が殺された後、ギフンたちは最初に署名させられた参加同意書の条項に基づき、ゲームの中断を多数決で決める。それぞれ家に帰って短い時を過ごすが、結局はみんな賞金獲得のためにゲームに戻ってくる。
ゲーム参加者たちはいずれも厳しい状況に置かれている。セビョク(チョン・ホヨン)は脱北者で、北朝鮮から家族を呼び寄せるための金を必要としている。アリ(トリパティ・アヌパム)はパキスタン人の不法移民で心優しい父親だが、給料をまともに支払ってもらえない。現実社会でかなわぬ夢を追っても追い詰められていくだけと、みんな死の危険を顧みず巨額の賞金を目指すことを選ぶ。
もっとも参加者は善人ばかりではない。ギャングのドクスはいかにもワルといった感じで、ライバルが減ると思えばほかの参加者を殺すこともいとわない。もう1人の悪役については、あえて正体には触れないでおく。ある参加者に対するこの人物の行いは許し難いもので、視聴者は大いにショックを受けるはずだ。
思わず大泣きさせられた場面
ゲームの場面はスリル満点だ。綱引きで老若男女の混成チームが力で勝る男性のみのチームと戦う場面では、混成チームが一歩一歩後ろに下がっていくたびに思わず声援を送ってしまった(彼らが勝つということは、ほかの人々が奈落に落ちて死ぬことを意味するわけだが......)。
また、自分を虐待していた父親を殺して服役し、出所してきたばかりで金も友人もない女性ジヨンが自らを犠牲にしてセビョクを勝たせた場面では大泣きした。タイトルにもなっているイカゲーム(地面にイカの形に似た図を描いて遊ぶ陣取りゲームの一種)で最後に残った2人が戦う場面は、緊張に耐えられずスマホの画面に目をやりつつ見た。
本作には、人の不幸を面白がって見るという「悪行」について道義的に問う部分がある。そんな作品がネットフリックスで一番人気のヒット作になるというのはちょっと皮肉な気もする。
最終話でギフンが訪れたヘアサロンのテレビからは、韓国の家計債務のGDP比が上昇しているというニュースが流れる。ここから分かるのは、人々の経済的な苦境や、不完全なシステムの中で負け組になってしまった人々が被る影響といった問題も本作の大きなテーマだということだ。
ギフンはゲームの運営側にこう言い放つ。「俺は(競馬の)馬じゃない。人間だ」。彼が背負うさまざまなものがどう生かされるのか、今からシーズン2が待ち遠しい。
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