ドラマで「悪役」を演じるということ...役との向き合い方、現実への影響
The Season Is All About Freedom.
ファインズが演じる権力者フレッドは新シーズンでは反省を迫られる LARRY BUSACCA/GETTY IMAGES
<暗黒の近未来を描く『ハンドメイズ・テイル』で、ディストピアの権力者を演じるジョセフ・ファインズに迷いはない>
Huluの連続ドラマ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』の第4シーズン、そのキーワードは「自由」だ──と言ったのは、イギリス人俳優のジョセフ・ファインズ。マーガレット・アトウッドの同名小説(1985年)を下敷きとする本作で、近未来のディストピア世界ギレアドに君臨し、人々の自由を奪う司令官フレッドを演じている。
「今シーズンは舞台が地理的に広がり、ギレアドの外の世界まで見える。それが自由のパラドックスを生み出す」
フレッドと主人公ジューン(エリザベス・モス)の力関係は、フレッドの邪悪さを浮き彫りにする。「彼は自分のやっていることを理解している。自分自身にも周囲の人間にも、自分こそ犠牲者だと信じ込ませているが、実は加害者であるような人間。それがフレッドだ」
だが、今シーズンは立場が逆転する。「彼は自分のことをじっくり反省しなくてはならない。それは自分がそこにいる理由を理解し、受け入れることに近い」。なぜか。本誌H・アラン・スコットがファインズに聞いた。
――フレッドのような邪悪な人物を演じることに抵抗はなかったか?
この家父長制的な悪夢の世界に潜む問題を浮かび上がらせる。そのためにこそフレッドは存在する。だから私は彼の堕落に、とことんまで付き合う。ほっとするのは過去を振り返る場面だ。フレッドがそれほど邪悪でなかった時代に戻れるから。
――つまり、フレッドを好きになれると?
フレッドは自分が他者に与える痛みを完全に認識している。ひどい体制の下で自分がどれほどひどい役割を果たしているかを理解している。
――ギレアドと現実世界との類似点は?
シーズン2には議会を襲撃する計画の話があった。それが今年1月に現実になって、私たちの民主主義がいかに脆弱かを思い知らされた。
――ドラマのファンからはどんな反応がある?
私をフレッドと同一視して毛嫌いする人もいる。でも、作品中の名文句を引用してくれる人も多い。まあ、反応はさまざまだ。幸いにして、まだ路上で物理的な攻撃を受けたことはないね。