最新記事

世界が尊敬する日本人100人

羽生結弦が「最も偉大な男子フィギュア選手」である理由【世界が尊敬する日本人】

2019年4月23日(火)17時50分
ジャステン・ピーターズ

ATSUSHI TOMURA-INTERNATIONAL SKATING UNION/GETTY IMAGES

<「彼がファンにもたらす喜び、それにリンク上の彼のオーラと存在感は、ほかの誰とも違う」と、米NBCテレビの解説者は言う>

201904300507cover-200.jpg

※4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が尊敬する日本人100人」特集。お笑い芸人からノーベル賞学者まで、誰もが知るスターから知られざる「その道の達人」まで――。文化と言葉の壁を越えて輝く天才・異才・奇才100人を取り上げる特集を、10年ぶりに組みました。渡辺直美、梅原大吾、伊藤比呂美、川島良彰、若宮正子、イチロー、蒼井そら、石上純也、野沢雅子、藤田嗣治......。いま注目すべき100人を選んでいます。

◇ ◇ ◇

羽生結弦は世界で最も偉大な男子フィギュアスケート選手だ。フィギュアスケートについて多少なりとも知識があるアメリカ人なら誰でも、そう言って差し支えないことを知っている。

五輪2連覇という66年ぶりの偉業をなし遂げ、昨年11月のグランプリ(GP)シリーズ第3戦フィンランド大会では、ルール改正後の世界最高得点を3つ(ショートプログラム、フリー、合計点)たたき出した。米NBCテレビで解説を務めたタラ・リピンスキー(長野五輪女子フィギュアの金メダリスト)は「彼は常ならざる力を持っている」と感極まった様子で語った。

多くの競技スポーツと異なり、フィギュアのトップ選手は運動能力の高さを問われる一方で芸術家でなければならない。表現力と情感にあふれるとともに、高難度の技を盛り込んだ演技が求められるのだ。羽生はそのいずれにおいても秀でている。

まず、羽生は一流のアスリートだ。最近の男子フィギュアスケートの世界では4回転ジャンプを決めることが勝利の条件となっているが、羽生は複数の4回転ジャンプをレパートリーとしている。2016年、彼は公式試合で4回転ループを跳んで着氷に成功した初の選手となった。GP第3戦のフリーの演技では、4回転トウループからトリプルアクセルのコンビネーションジャンプを史上初めて成功させた。

一方で羽生は芸術家でもある。彼の演技は一貫して優雅であり、その動きは非の打ちどころもなく美しい。まるで音楽と一体になっているかのように滑る。

滑るたびに彼はスケートへの大いなる愛を表現し、それはファンからの愛となって彼の元へ帰ってくる。だから演技を終わるたびにリンクにはクマのプーさんのぬいぐるみが降り注ぐ。「彼がファンにもたらす喜び、それにリンク上の彼のオーラと存在感は、ほかの誰とも違う」とリピンスキーは語った。

「強いアスリート」たることがフィギュアスケート選手に求められているこの時代、羽生は「クワッドアクセル」つまり4回転半ジャンプへの挑戦も視野に入れている。NBCの中継で元全米王者のジョニー・ウィアーは「誰かができるとすれば、それは彼だ」と言った。そう、羽生ならやれる。

Yuzuru Hanyu
羽生結弦
●フィギュアスケート選手

<2019年4月30日/5月7日号掲載>

※この記事は「世界が尊敬する日本人100人」特集より。詳しくは本誌をご覧ください。

「世界が尊敬する日本人100人:2019」より
夢破れて31歳で日本を出た男が、中国でカリスマ教師になった:笈川幸司
遠藤謙、義足開発で起業し、目下の目標は「東京パラ金メダル」
中国人が蒼井そらを愛しているのはセクシー女優だから──だけではない
世界屈指のプロゲーマー梅原大吾「人生にリセットボタンはない」の転機【世界が尊敬する日本人】

※過去の「世界が尊敬する日本人」特集で取り上げた人の一部は、本ウェブサイトのニューストピックス「世界が尊敬する日本人」に掲載しています。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震、インフラ被災で遅れる支援 死者1万

ビジネス

年内2回利下げが依然妥当、インフレ動向で自信は低下

ワールド

米国防長官「抑止を再構築」、中谷防衛相と会談 防衛

ビジネス

アラスカ州知事、アジア歴訪成果を政権に説明へ 天然
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 5
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 6
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 7
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中