ジム通いもプロテインも不要な「塀の中の筋トレ法」が日本上陸
著者には、キャリステニクスの師匠がいた。ジョーという終身刑囚だ。片手の親指だけでプッシュアップ(腕立て伏せ)をこなし、「悪魔のように強かった」らしいが、塀の中で息絶えた。
何のために、日々苦しみ抜いて体を鍛えたのか。犯した過ちへの反省、被害者への償い、最初のうちはそんな殊勝な動機も込められていたかもしれないが、いつしかトレーニング自体が「生きている証」で「誇りの源泉」であり、「友を作る手段」へと転化していったに違いない。
プッシュアップ(腕立て伏せ)だけで10ステップ
本書では、以下の6種目(ビッグ6)について、それぞれ10のステップが紹介されている。
●鎧のような胸をつくり、関節や腱を強化する「プッシュアップ(腕立て伏せ)」
●エレベーターケーブルのような太ももをつくり、足腰の若さを保つ「スクワット」
●大砲のような上腕をつくり、広背筋の眠りを覚ます「プルアップ(懸垂)」
●腹を殴ってきた拳のほうが痛くなるほど頑丈な"地獄のシックスパック"をつくる「レッグレイズ(脚挙げ)」
●筋トレ愛好家ですら軽視しがちな背骨を鍛える「ブリッジ」
●男性性を純粋にアピールする健康的でパワフルな肩をつくる「ハンドスタンド・プッシュアップ(逆立ち腕立て伏せ)」
この「ビッグ6」は、解剖学や運動療法に基づき、人体すべての筋肉を働かせる基本動作で、6つの動作が融け合ってひとつになる。6つを超えるトレーニングはやり過ぎで、5つ以下だと、体のどこかに未発達の筋肉ができてしまうのだという。
各ステップごとに見開き2ページでまとめられ、写真や、時にイラストも交えて分かりやすく説明されている。どのような動きが要求されているのか、理解できずに戸惑うことはまずないだろう。
終盤では、筋肉を極限まで追い込まないこと、飲酒を控えること、トレーニング記録を取ることの大切さなども綴られている。
プッシュアップだけで10種類だ。その数字だけを見ると相当マニアックな筋トレ本に思えて、おじけづいてしまいそうだが、心配は無用である。誰もが知っている普通の腕立て伏せ(フル・プッシュアップ)よりも負荷が小さい4種のプッシュアップが載っており、筋トレに自信のない初心者にも入りやすい、意外と優しい構成となっている。
なお、本書をパラパラと読んで、ステップ5のフル・プッシュアップから始めようとするのは、近いうちに挫折する「馬鹿げたやり方」だと、著者は断言する。
遠回りだと感じられても、まずは最も簡単なステップ 1のウォール・プッシュアップに1カ月間こだわるべきだという。簡単にこなせても侮らず、丁寧に1回1回を噛みしめることが重要だ。
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