最新記事

健康

4時間で肉体改造した男

「週4時間」の仕事術で有名なT・フェリスが、今度は自分をモルモットに健康ボディーづくりを指南

2011年2月23日(水)17時29分
ジェリー・クオ

効率至上主義 ライフハッカーのテクニックは健康増進にも通用するのか Henry S. Dziekan III/Getty Images

 あなたがティモシー・フェリスをいけ好かない男だと思っても無理はない。何しろこの人物は、シャレにならないほど大きな成功を次々と収めてきた。

 07年に出版した初の著書『なぜ、週4時間働くだけでお金持ちになれるのか?』(邦訳・青志社)は、たちまちベストセラーに。その後は起業家専門の投資家に転身し、ツイッターなどに出資。プリンストン大学で講師を務め、タンゴの連続スピンでギネス記録を持っている。

 フェリスは、効率的な仕事術・生活術の実践を旨とする、いわゆる「ライフハッカー」の典型だ。そのノウハウを活用すれば、門外漢の分野も攻略できると思っているらしい。

 フェリスが新しい著書で取り上げたテーマは健康だ。10年12月刊行の『4時間ボディー』では、若干の科学的知識と大量のデータを基に人間の体を理解することを目指した。

 このテーマで本を書くのに、フェリスはうってつけの人物だ。これまでに受けた血液検査は1000回以上。18歳以降に行ったエクササイズの記録をほぼすべて残しており、自宅の引き出しの中には、パルスオキシメーター(動脈血酸素飽和度の測定器)やスリープトラッカー(レム睡眠時に起こす目覚まし)などの機器がそろっている。

 フェリス自身がモルモット役になって実験した結果、興味深いことがいくつか得られた。例えば、血糖値測定器を腹部に埋め込んでデータを収集して、食べ物の栄養分が血液中に入るのは食事の何時間も後であることを実証した。つまり、スポーツの直前に栄養補給しても意味がない。

減量法は「動くな、食え」

 常識に反する記述も多い。体重を減らしたければ、食べる量を増やし、運動する量を減らせと、フェリスは言う(ただし一定の食事内容に従う必要がある)。この本の大きな売りは、フェリスがわずか28日間、合計4時間のエクササイズだけで、筋肉を約15.5キロ増やし、脂肪を約1.8キロ減らした上、コレステロール値を222から147に落としたという実績だ。

『4時間ボディー』を読むと、誰にでも同じことができそうに感じる。しかしその点を本人に聞くと、自分はすべてを偏執的なまでに徹底したから成功したのだとフェリスは言った。「普通の人に同じことができると思うかって? 無理だろう」

フェリスは、すぐ結果の出る手法を極めて好む。カフェインの脂肪燃焼効果を長続きさせるためには、グレープフルーツに含まれる物質ナリンゲニンの摂取を勧める。筋肉を増やすためにはショウガを、レム睡眠を促すためにはヒューペルジンという物質を摂取するといいという。

このような記述の科学的な信憑性を疑う人もいるだろう。一応、本に書かれていることの多くは、フェリスが愛読する専門誌に掲載された研究に基づいている。しかし、別個の実験結果により裏付けられていない研究や、何十年も昔の症例報告も含まれている。

結局、この本の最も有益な主張は、フェリスのようにさまざまなツールを用いて自分でいろいろ試し、オンライン上で同好の士と情報を交換し、効果的な健康増進法を自分で選択すべしというメッセージだ。個々の具体的なアドバイスは、あまりうのみにしないほうがいい。

[2011年1月26日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ポーランド、米と約20億ドル相当の防空協定を締結へ

ワールド

トランプ・メディア、「NYSEテキサス」上場を計画

ビジネス

独CPI、3月速報は+2.3% 伸び鈍化で追加利下

ワールド

ロシア、米との協力継続 週内の首脳電話会談の予定な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    「関税ショック」で米経済にスタグフレーションの兆…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中