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新譜王道だけど新しいスウィフトの進化
カントリーの歌姫の『1989』は音楽性も歌詞もパワーアップ
パワー全開 幅広い層の女性に支持されるスウィフト Christopher Polk/Getty Images for iHeartMedia
テイラー・スウィフトのヒット曲といえば「レッド」「トラブル」「オール・トゥー・ウェル」など、どれも恋の歌。とはいえ甘い純愛ではなく、どちらかというと自動車事故の光景をバックミラーで眺めるようなものだ。恋に夢中になって自分をコントロールできなくなるさまと、その結末を振り返る。
そんな2つの要素こそ、スウィフトが幅広い層に支持される理由の1つだ。若いファンは熱に浮かされるような恋に思いをはせ、大人のファンは苦い失恋の教訓をかみしめる。彼女のアルバムがいつも秋に発売されるのもよく分かる。
先頃リリースされた新アルバム『1989』からのシングルカット「アウト・オブ・ザ・ウッズ」も、まさにスウィフト的な一曲だ。あっという間にiTunes総合サイトの1位になったこの曲は、比喩を織り交ぜつつ、不安だらけのはかない恋を歌い上げる。
中には比喩でなく、現実を反映した一節も。「あなたがブレーキを早くかけ過ぎたのを覚えてる?/病院で20針よ」。これは元カレがスノーモービルで負傷した思い出だと、スウィフトはローリングストーン誌に語っている。相手はかつて噂になったアイドルバンド、ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズだと勘繰る声もある。
そんな噂よりも注目すべきは、この曲がロックバンド、ファンのギタリストであるジャック・アントノフとの共作という点だ。歌詞はスウィスト的だが、音楽はアントノフそのもの。いつもおなじみのギターやバンジョーの代わりに、シンセサイザーやドラムを多用し、音楽的な広がりを見せている。
「アウト・オブ・ザ・ウッズ」は『1989』の全体の雰囲気を伝える曲だと、スウィフトは語っている。それならファンにとっては朗報だ。彼女らしいキレのいい歌詞と、幅広い音楽性を備えた曲がほかにもたくさん詰まっているということだから。クリスマスに向け、女子に欠かせない一枚になりそう?
© 2014, Slate
[2014年11月11日号掲載]