『ハウス・オブ・カード』が変えるドラマの法則
人間の非合理的な部分を利用して操る
冷酷な策士のアンダーウッドは、誰も信用していない。なかでも用心しなくてはいけないのは、自分に一番近い人間だ。テレビの仕事が初めてのフィンチャーは、そんな主人公に興味をそそられた。「主人公が議会の廊下を歩きながら視聴者に向かって語り掛け、政治の世界で日常的に行われているありふれた不正から、高度なペテンまでを解説する設定がとても面白いと思った」と、フィンチャーは語る。
「ただ、具体的にどうリメークしたらいいのか私には分からなかった」と、フィンチャーは認める。「でもその辺はボーがとてもうまくやってくれた。支持者と握手したり赤ん坊にキスしたり、ショッピングモールの開店式に顔を出すといった地道な活動と、ワシントンの政治がどうつながっているかをうまく描いてくれた」
ウィリモンは政治の世界と無縁ではない。後に民主党全国委員会委員長を務めたハワード・ディーンが米大統領選予備選に出馬したとき、選挙活動を手伝ったこともある。その経験を基に書いた戯曲は、ジョージ・クルーニー監督・主演の『スーパー・チューズデー』として映画化された。
「政治家の遊説活動に同行すると、『この人たちも人間なんだ。普通の人と同じように食事をし、トイレに行き、家族とゆっくり時間を過ごしたいと思うんだ』と気付く」と、ウィリモンは言う。「政治とは多くの意味で人間関係だ。人間の非合理的な部分を利用し、操ることだ」
アンダーウッドと冷淡な妻クレア(ロビン・ライト)の関係もウイットとスリルに満ちている。「2人の夫婦関係と力関係はとても興味をそそられる」とマーラは語っている。