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映画アカデミー賞『アルゴ』にイランが激怒
ミシェル大統領夫人の受賞発表という「政治的」演出に国内外から批判が
問題作 イランを一方的に悪者扱いにした、と逆鱗に触れた『アルゴ』 ©2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
イラン革命成立後の79年11月、イランの学生400人あまりが首都テヘランにある米大使館を占拠し、52人のアメリカ人を444日間拘束するという事件が発生した。この時の大使館職員救出作戦を描いた映画『アルゴ』(ベン・アフレック監督)が、米アカデミー賞で作品賞など3冠に輝いたことにイランがかみついた。受賞は「CIA(米中央情報局)の宣伝」であり、事件を歪曲して伝えるシオニスト(ユダヤ主義者)の陰謀だというのだ。
ワシントンポストは、イランのファルス通信からの引用でこう伝えた。「オスカー史上でも珍しいことに、大統領夫人が反イラン映画『アルゴ』の作品賞受賞を発表した。この作品はシオニストの企業、ワーナー・ブラザースが制作したものだ」
『アルゴ』はイラン国内では劇場公開されていないが、海賊版DVDが評判になっている。世代によって作品の評価は分かれているようで、当時のイラン革命に参加した人々が厳しく批判する一方、事件を直接の体験として覚えていない若い世代は違った見方をしている。AP通信によればテヘラン市議会議員のマスーメ・エブテカーは、『アルゴ』は米大使館襲撃時の暴力を誇張していると指摘。エブテカーは襲撃に加わった学生の1人だった。
授賞式登場はミシェルが初めてではないが
ミシェル・オバマがホワイトハウスからの中継という形で受賞式に登場したことで、アカデミー賞が政治的なものであることが明らかになったという批判もある。ファルス通信と同じくイランのメヘル通信は、なぜ「反イラン映画の受賞発表のときだけ」例外的にミシェルが現れたのか、と疑問を呈する。
大統領夫人の登場に憤ったのはイランの人々だけではない。「教会と国家の分離はもちろんだが、ハリウッドと国家の分離こそ必要だ」と、保守派ジャーナリストのミシェル・マルキンは語った。米ニュースサイトのブレイトバートは、ミシェルの登場は「常識はずれ」と批判した。
しかし、リベラル派の市民団体メディア・マターズ・フォア・アメリカ(MMFA)はこう指摘している――ミシェル・オバマは受賞作を発表するのに「ふさわしい」と思っているようだ、と右派メディアは批判するが、受賞式に登場した大統領夫人は彼女が初めてではない。
ジョージ・W・ブッシュが大統領だった02年、ローラ夫人はアカデミー賞受賞式のオープニングに登場した。81年の受賞式には、就任したばかりのロナルド・レーガン大統領のホワイトハウスからのビデオメッセージが流れた。
From GlobalPost.com特約