この夏はクーガー女が熱い
若手のスターが足りない裏事情も
『マイ・ライフ・イン・ルインズ』に主演するバルダロスは、撮影開始の前日まで共演者との年齢差に気付かなかったという。「もう笑っちゃった」と、彼女は言う。「この間、娘の洗礼式があったんだけど、こっちじゃ水を使うのね。私たちギリシャ系の女は、洗礼式でオリーブオイルに漬かるの。だから老けないのよ」
クーガー女がもてはやされる背景には、もう少し微妙な事情もありそうだ。最近のハリウッドは、若手のスター不足に悩んでいる。特殊効果と芸能ゴシップサイトが、誰彼構わず一夜でスターに祭り上げるせいもあって、しっかり主役を張れる20代の女優がなかなか出てこない。
そこへいくと、ブロックのようなベテラン女優は今も観客動員を計算できる。『あなたは私の婿になる』は6月に全米公開されると、すぐさま興行収入1位になった。
しかし、ここで疑問が浮かんでくる。女性たちは本当にクーガー女に憧れているのだろうか。
08年は女性と映画にとって記念すべき年だった。映画版『セックス・アンド・ザ・シティ』が、女性をターゲットにした作品としては史上最高の興行収入を記録。『トワイライト~初恋~』は、女性監督の作品としては史上最高のヒットになった。それなのにハリウッドは、女性向けの映画作りがまだ分かっていないようだ。
『クーガータウン』の予告編を見ると、コートニー・コックスがセックスに飢えたバツイチ女性を演じている。この設定では、スタートしても打ち切りは時間の問題だろう。現実の40代女性は仕事や子育てに忙しく、若い男を追い掛ける時間などありはしない。
クーガー女は、メディアがつくり出した一過性のブームでしかないのかもしれない。クーガー女の代表格といえば『セックス・アンド・ザ・シティ』のサマンサだが、彼女も年下の恋人スミスとは破局した。『デスパレートな妻たち』のガブリエルも、高校生との不倫にピリオドを打った。
今はパワー全開のクーガー女たちも、きっと来年の夏には絶滅しているのだろう。
[2009年7月15日号掲載]