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「頭の切れる人」とそれほどでもない人の決定的な差 いきなり考えても決してうまくいかない理由

2021年4月10日(土)11時30分
柳川範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授) *東洋経済オンラインからの転載

共通点は、ざっくりとした、場合によっては多少こじつけになってもかまいません。厳密にいうと違うということがあるかもしれませんが、そこは正確さを求めずにトレーニングをすることのほうが大切です。こじつけでもいいから違う話題について共通点を見出せることのほうが、能力として、頭のクセとしては重要ではないかと思います。

似たものに違う点を見つけ出す

〈考える土台をつくる頭の使い方③〉
相違点を探す

情報を抽象化して理解するステップとしては、逆の頭の使い方もあります。それは、似たものに違う点を見つけ出すことです。つまり、似ているように見えるけれども本質は違っているのではないか、同じ現象のはずなのに、このあたりで違うのはなぜだろうと、思考をめぐらすことで、抽象化のクセをつけていくやり方です。

例えば、同じような不祥事のニュースが相次いだとしましょう。通常だと、「ああ、また同じような不祥事か」と流してしまいがちです。しかし、そこであえて、少しこだわってみる。どこか違う点がないだろうか、違う点はどのあたりにあるだろうかと、もう少し詳細にニュースを検討してみるのです。違う会社で起きた出来事ならば、詳細に見ていくと違う点がいろいろ出てくるでしょう。

そうしたら次に、そのような違う点があるのに、なぜ同じような不祥事が起きたのかを想像してみます。そのように思考を広げていくことによって、抽象化して考えるクセがついていきます。

books20210408.jpg大切なのは、同じような情報に接したときに、「ああ似ているな」と思うだけで流さないことです。あえて違いを見つけ出すことがポイントです。

このように抽象化していくにあたっては、比べるという作業がとても有効になります。ただし、現代はさまざまな情報が洪水のように流れてくる時代です。すべての情報について、このように丁寧に対応していたのでは時間がいくらあっても足りないことも事実でしょう。

ここで説明したのは、あくまでも抽象化するクセを身につけるにあたっての、発想の仕方、工夫の仕方にすぎません。これをきちんと実行できるようにする必要はありません。準備段階としては、そのような方向性を意識するだけで十分です。

そのあとで少しずつ、自分が大事な情報だと思うものに、時間をかけて抽象化のクセをつけていけばいいのです。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。元記事はこちら
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