バズるにはどうしたらいい? 面白いってどういうこと?【田中泰延×岩下智】
田中 それは、面白いことを企てようとするときに、外からものを連れてくるっていう部分かな。要するに観察ですよね。スマホなんか見ないで、世の中を見回して、心に余裕を持って発見したものが面白い。これが、基本的に自分と同じなんじゃないかと思いました。面白さって、自分の中からなんて湧いてこないじゃないですか。
岩下 みんな、そういうのがどこかから降ってくると思いがちなんですけど、そう簡単に降ってはこないですよね。どこかで見たものを思い出したり、ニュースで見たものからヒントを得たりしながら、面白さを探していく。
そういう意味で、いろいろと情報を持っている人のほうが面白いことを言えるのかな、とは思いますね。
田中 だから、やっぱり面白いことには、ある程度の知識や教養は必要なんですよ。さっきの「辺野古」とか「公定歩合」とかも、まったく文脈と関係ないから笑いが起こるけど、聞いてるほうにも知識がなかったら面白くない。
そういう意味では、面白いことが言えない人は不注意っていうのもありますね。誰かの発言にしたって何にしたって、いろんなところに面白いことを言うためのネタは転がっているのに、それに気付かない。
ウンコを踏んで臭い人はなぜ面白いのか
岩下 僕は今回、この本の中で「面白い」を法則化してみたんですけど、元々はっきりと意識していたものではなくて、書いているうちにだんだん自分の中で整理できてきて、「こういうことかな」というふうにまとまった感じなんです。
ただ一方で、書いているうちに、いわゆる方法論を書いてもしょうがないんじゃないかって思うようにもなったんです。「ああすれば、こうなる」っていう内容になったらダメだなって気付いた。それで、全体に若干ゆるい内容になっているんですけど(笑)。
そこでぜひお聞きしたいんですが、泰延さんにとっての「面白い」の定義って、どういうものですか?
田中 僕にとっての「面白い」の定義は、「自分を捨てる」ということです。僕は大阪人ですから、バナナの皮があったら率先して滑りにいく奴が面白いんですよ。犬のウンコが落ちていたら率先して踏みにいく奴が面白い。
でも、東京の面白い人とか広告業界の面白い人っていうのは、自分は安全地帯にいる。安全地帯から提示する「面白さ」って、「おしゃれ」に近いんですよ。
岩下 あー。
田中 もっと言うと、自分が死ぬことが最大のオチなんですよ。どんな人間でも最後は死ぬでしょ。つまり、われわれはオチに向かって歩いているわけだから、そのオチを予感させることが笑いになる。
先日、がんで余命告知を受けている写真家の幡野広志さんとネパール取材に行ったんですけど、まずいものを食べたときとか、車が危ない所を走ったときに、「やめて! 寿命が縮まる!」って言うんですよ。こんな恐ろしいギャグ、幡野さん本人しか言えないですよ。
岩下 なるほど。僕のほうは、本の中では辞書に書かれている定義から引っ張ってきて、「人を惹きつける何らかの魅力がある状態」が「面白い」ってことなんじゃないかなと書いていて、確かに定義上はそうなるんですけど、やっぱり人それぞれ違うと思うので、なかなか難しいなぁと改めて思いますね。