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AI主導の米株高は「ドットコムバブル」と類似...バブル崩壊を警戒

2024年7月2日(火)20時38分
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FILE PHOTO: AI (Artificial Intelligence) letters are placed on computer motherboard in this illustration taken, June 23, 2023. REUTERS/Dado Ruvic/Illustration/File Photo

人工知能(AI)を巡る興奮に後押しされた米国株の上昇は20年前のドットコムバブルと比較され、楽観論によって価格が再び膨らんでいるのではないかという疑問が強まっている。

AIフィーバーは底堅い経済と好調な業績と相まって、S&P500指数を2022年10月の安値から50%以上上昇させ、ナスダック総合指数も22年末から70%以上値を上げている。


 

株価のバリュエーションと投資家の熱狂は世紀の変わり目のピークにはまだ達していないが、類似点はある。

AI半導体メーカーのエヌビディアなど巨大テック株の一部銘柄が現在の市場を象徴しており、1990年代後半の「4騎士」(シスコ、デル、マイクロソフト、インテル)を想起させる。

懸念されるのはドットコムブームと同じ結末を迎える可能性だ。わずか3年余りで4倍近くになったナスダック総合は2000年3月のピークから02年10月までに約80%下落した。同じ期間で2倍になったS&P500はこの期間に50%近く値を下げた。

アマゾンのような一部のインターネット銘柄は生き残り、最終的には繁栄したが、他の銘柄は回復しなかった。

ウェルズ・ファーゴ投資研究所のグローバル市場担当シニアストラテジスト、サミール・サマナ氏は「AIで何が起こるか、誰も正確には分からない」と述べ、最終的な勝者についても同様の不確実性があると指摘した。

LSEGデータストリームによると、ドットコムブームと同様、IT(情報技術)セクターがS&P500全体の時価総額に占める割合は32%にまで膨れ上がり、35%近くまで上昇した2000年以降で最高となっている。マイクロソフト、アップル、エヌビディアのわずか3社が指数の20%以上を占めている。

ただ、テック株はドットコムバブルのピーク時よりも割安に評価されており、予想株価収益率(PER)は2000年の48倍と比べ、現在は31倍で取引されている。

この違いはエヌビディアと、ネットインフラを支える製品を提供するシスコのバリュエーションを見れば明らかだ。

データストリームによると、両銘柄とも急騰したが、エヌビディアの予想PERは40倍にとどまり、シスコは00年3月に131倍に達した。

キャピタル・エコノミクスのアナリストは、現在の株高は堅調な業績見通しによってもたらされており、ファンダメンタルズがより大きな原動力となっていることを示唆していると指摘する。

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