災害・有事で「経済を止めない」ために...「1日で対応」実現するサプライチェーン強靭化戦略
同社がこのたび導入したEW-Resi.は、富士通の汎用システムと統合し、2023年4月にパナソニックEW社全社で稼働させた「ES-Resi.(ESレジ)」を発展させたものだ。
サプライチェーン統括センターの森下所長の説明によれば、最初のES-Resi.により、全社での情報共有、サプライチェーン上のアクシデントに影響を受ける部品の早期掌握、そして代替品の事前登録による対応アクションの早期化を実現した。
「Teamsチャットを使ったスピーディーな情報共有も可能になり、BCP(事業継続計画)状況の把握を平均10日から3日にまで短縮することができました。一方で、情報共有から先のアクションについては、従来通りに各所で属人的に行う必要があるなど課題もあった」(森下氏)
本格運用前に起こった能登半島地震で分かったこと
そこで新たに開発・導入したEW-Resi.では、富士通のビッグデータ解析プラットフォームや最新のAI技術を採用している。
生産、販売、在庫、部品調達など20の現行システムの業務統合に加え、20万品番を超える在庫部品の紐づけや可視化を行い、生産・販売・在庫を統合的に計画するPSI計画や、部品調達計画などのグローバルレベルでの全体最適化ができるようになった。
有事対応においては、地震などで被災したサプライヤーの被災情報や部品の手配状況、影響を受けそうな部品や代替部品の在庫状況などを、即座に抽出・リストアップできるよう機能を大幅にアップデートしている。災害発生時の対応アクションは、平均1日で完了できるようになった。
4月に全社導入されたEW-Resi.が早速その成果を発揮したのが、本格運用前に発生した能登半島地震時の対応だった。
「震度5以上を計測した被災地の情報を抽出し、当該地域のサプライヤーに関わる製品や部品の状況等を可視化すると同時に、供給に影響が出そうな部品や代替部品の供給が可能な他拠点を特定して対応を行いました。EW-Resi.では、そこまでのアクションを即日に完了することができ、結果として生産停止を回避することができたのです」(森下氏)
現在は国内外18拠点の連携を終え、実運用後の2024年度内には海外を含むすべての拠点を連携する予定だという。
「海外拠点では一部、モニタリング等のレベルを国内拠点と少し変えた運用を行います。SCM情報のグローバルでの共有をこのレベルで実現しているメーカーは、日本では他にないと思います」と、森下氏は胸を張る。