最新記事
米中経済

米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達した中国経済が昨年は3分の2まで縮小

How China's Economy Compares to the US

2024年4月30日(火)18時21分
マイカ・マッカートニー

逆転の夢は過去のものか? rawf8-shutterstock

<1〜3月の成長率では中国経済が一見米経済を上回ったが、パンデミックからの回復に失敗した中国とアメリカの差は拡大する一方だ>

2024年第1四半期の米経済と中国経済の成長率は、いずれも市場予想に反するものだった。

米経済はインフレ圧力の高まりを受けて成長ペースが鈍化したが、失業率は低水準を維持した。一方の中国経済は幾つかのセクターで回復の兆しが見られたが、その一部は3月までに減速した。

 

両国の経済状況は、新型コロナウイルスのパンデミック以降、異なる方向に向かっている。米経済は消費支出と堅調な雇用市場が推進力となり、力強く回復している。一方中国経済は、不動産セクターの危機、外国投資の停滞や消費者信頼感の低迷が重しとなり、迷走している。

【動画】その距離わずか5メートル...中国戦闘機によるカナダ哨戒機への「異常接近」

米経済は2023年、予想を上回るペースで成長。強い雇用市場と堅調な消費支出を支えに、実質GDP成長率2.5%を達成した。だが2024年第1四半期(1〜3月期)のGDP成長率は年率換算で前年同期比1.6%にとどまり、前期(2023年10~12月期)の3.4%から大幅に鈍化。市場予想の2.4%にも届かなかった。インフレ率が高まり、公共支出と政府支出が減少するなか、2年ぶりの低水準に落ち込んだ。

newsweekjp_20240430090657.png

米証券会社LPLフィナンシャルの主任エコノミストであるジェフリー・ローチは米CNBCに対して、「消費者の散財が終わりに近づいている可能性が高く、それに伴って今後の四半期成長率はさらに減速傾向が強まるだろう」と指摘。またローチは、物価の高騰はアメリカ人の貯蓄率を押し下げ家計を圧迫しているが、2024年後半には全体的に需要が減速するのに伴ってインフレも緩和されるだろうと予想した。

中国の成長の大半は1、2月だけ

強い雇用市場も経済を支えている。米労働省によれば3月の失業率は3.8%で、2023年8月以降、米失業率は3.7~3.9%の範囲内にとどまっている。IMF(国際通貨基金)は2024年の米経済の成長見通しを2.7%としているが、失業率については4%に上昇するだろうと予想している。

一方で世界2位の規模を誇る中国経済の2024年第1四半期(1~3月期)の成長率は、前年同期比で5.3%。前四半期よりもわずかに上昇し、ロイターがまとめたアナリスト予想を0.6%上回った。

これに先立ち中国国家統計局は、2023年の中国経済の実質GDP成長率が5.2%を記録し、目標だった「約5%の成長」を達成したと発表していた。2024年についても、3月に開かれた全国人民代表大会(全人代)で5%前後の成長目標が設定されている。

しかし第1四半期のデータを詳しく見ると、輸出など幾つかのセクターの成長は主に1月と2月に達成されたものであることが分かる。これにより、パンデミック後の回復が遅れている中国経済の回復力を疑問視する声が上がっている。

中国の第1四半期の失業率は平均5.2%で、2023年のはじめ以降、5~5.3%の範囲内を推移し続けている。中国では、失業者の数を失業者と就業者の合計で割ることで、四半期毎の平均失業率を割り出している。特筆すべきは中国政府がこの計算において、人工の約3分の1を占める農村部の人々を除外していることだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中