日本製鉄によるUSスチールの買収・子会社化...「待った」をかけたバイデンの「本音」
Can A Deal Be Made?
「トランプ大統領」なら消滅
組合側の抱いている不満や不安は、十分に話し合いで解決できる。米国市場で見込める新たな収益を考えれば、日本製鉄としても受け入れられる範囲のことだ。
組合側の最大の懸念は、日本製鉄が現経営陣の方針を受け継ぎ、多くの組合員が働く高炉の閉鎖や売却に踏み切ることだ。しかし日本製鉄の広報は筆者の問い合わせに、「USスチールの高炉を閉鎖する意図はない。既存の高炉に新たな投資と革新をもたらし、脱炭素化の取り組みと全体的な効率の改善に貢献したい」と回答してきた。
組合側はまた、レイオフや年金などに関する現行の労使協定の全てを日本製鉄が引き継ぐことの絶対的かつ法的拘束力のある約束を求めている。日本側は既にそうした保証を与えたとしているが、組合側はあくまでも「法的」な保証を求めている。
米大統領選は11月5日。それ以前の決着は容易でないだろうが、双方とも本気で交渉に臨んでいる。その間、バイデンは選挙に勝つためなら何でも言うだろう。だがひとたびUSWが買収に同意すれば、堂々と前言を撤回できる。
では合意が遅れ、その前にトランプが大統領になったらどうか。おそらく、この話は消えてなくなる。
(筆者には『日本経済の未来を懸けた争い──起業家vs巨大企業』〔未邦訳、オックスフォード大学出版局刊〕の新著がある)
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