最新記事
災害復興

真の復興支援を問う... 北陸応援割の「便乗値上げ」にまちづくりの専門家が全力で賛成するワケ

2024年3月11日(月)13時47分
木下斉(まちビジネス事業家) *PRESIDENT Onlineからの転載

地方の観光業に必要なのは「高付加価値化」

地方の観光業はすでに安売りをしています。安月給で人を雇っていたら従業員が集まらない、人手不足が直撃している産業です。

だからこそ観光庁は、観光産業の稼ぐ力を強化するための「高付加価値化事業」を推進しています。客数ばかりを追うのではなく、客単価を引き上げて少人数でも稼げる産業になることを目指しているのです。

その施策と真逆のことをなぜ被災地に要求するのでしょうか。

被災地の応援消費・高付加価値など、中長期的に見て宿泊施設の経営改善につながる政策シナリオが大切です。

せっかくなのですから、単なる安売りではなく、それぞれが創意工夫をして普段はできないようなサービスを作り出す機会にしてもらうのが合理的です。

しっかり値上げをして、そこにクーポンが適用され、事業者がよりよいサービスにトライすればいいのです。

それが気に食わない人は、その宿泊施設に泊まらなければいいだけ。客には常に泊まらない権利があるのですから。

客に受け入れられないなら、事業者がまた別のアプローチを考えればいいのです。こういう無数の取引がマーケットで行われることで、はじめて「神の見えざる手」は働くのです。

安売りを強いる「応援割」は、被災地復興につながらない

観光庁は2月5日の衆院予算委員会で、「便乗値上げ」を監視する方針を示しました。新潟、富山、石川、福井の被災4県に、高額な価格設定が明らかな場合は報告を求め、場合によっては事業者の登録抹消も辞さない姿勢です。

なぜ国が主導して事業者に安売りを義務付け、ペナルティーまでちらつかせるのでしょうか。なぜこのようなおかしな話がまかり通るのか、全く私には理解できません。

宿泊費は値引きなし、お土産クーポンつけるだけの支援制度が最善だと私は思います。

実際、熊本県上天草市では市内のホテル・旅館などに宿泊した観光客へ、市内の飲食店やお土産店などで使えるクーポン券を配布しました。

変なダンピングにならず、市内の幅広い宿泊客がお金を使う動機になりました。

観光庁や政治家には、北陸の宿の発展、中長期的な高付加価値化の実現につながるような取り組みを期待したいと思います。

※当記事は「PRESIDENT Online」からの転載記事です。元記事はこちら
presidentonline.jpg

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中