最新記事
ビジネス

企業側の論理による「働き方改革」ではない...カゴメ有沢正人CHOに聞く、「生き方改革」の真髄

2024年2月28日(水)11時33分
flier編集部

人事にできるのは、心理的安全性を担保して、挑戦しやすい環境をつくること。ヒットの背後には数々の失敗があります。カゴメでは、失敗の原因は探りますが、基本的に失敗した人に責任をとらせず、「ナイストライ」と挑戦を称えています。また、社員からの企画もできるだけ却下せず、試す機会を与えるようにしています。少子高齢化で市場が細っていくなか、新しい事業をどんどんつくっていかないといけないですから。

何より、サプライズを生み出せる人材を育てるためには、まずは人事が、従業員に「うちの人事はこんなことまで考えているのか!」と驚きを与えていくことが大切です。

人事はマーケティングを学ぶべき。原点となった「行動科学の書」

──最後に、有沢さんの人生観やキャリアに影響を与えた本について教えてください。

行動科学の基礎的な理論から応用まで解説された『入門から応用へ 行動科学の展開』という本です。大学時代にマーケティングを専攻していて、副教材としてこの本に出合いました。

日本語訳もいいし、尊敬する教授の講義も素晴らしくて。テイラーの科学的管理法や、経営学者ダグラス・マクレガーX理論/Y理論、ブランド品の購買行動に影響する心理学的な要因などを学びました。後に世の中を席巻する「組織行動論」を予見した本でもあり、目からうろこの連続。大好きで何度も読みましたね。

この本から得た大きな学びは、マーケティングはすべてに影響するということ。私は常々、「人事は財務とマーケティングを知るべき」と語っていますが、バリュープロポジションやバリューチェーンのようなマーケティングの基本を理解してはじめて、ニーズ以上の価値を届けるべきエンドユーザーを見据えた人材育成に取り組めると考えています。今後もマーケティング知識の重要性を伝えていきたいですね。


240223fl_rah02.jpg

有沢正人(ありさわ まさと)

カゴメ株式会社常務執行役員(元CHO(最高人事責任者))

カゴメアクシス株式会社代表取締役社長

慶應義塾大学商学部卒業後、1984年に協和銀行(現りそな銀行)に入行。銀行派遣にて米国でMBAを取得後、主に人事、経営企画に携わる。2004年に日系精密機器メーカーであるHOYA株式会社に入社。人事担当ディレクターとして全世界のグループ人事を統括、全世界共通の職務等級制度や評価制度の導入を行う。2008年に外資系保険会社であるAIU保険会社に人事担当執行役員として入社。ニューヨーク本社とともに、日本独自のジョブグレーディング制度や評価制度を構築する。2012年1月、カゴメ株式会社に特別顧問として入社。カゴメの人事面におけるグローバル化の統括責任者となり、全世界共通の人事制度の構築を行っている。2012年10月執行役員人事部長、2017年10月執行役員CHO就任。2018年4月常務執行役員CHO(最高人事責任者)に就任。2023年10月より現職。

趣味:音楽鑑賞(特にプログレッシブ・ロック)、ドラマ・アニメ鑑賞、熱烈な阪神ファン(ドラマは深夜を含めて全部、アニメも深夜を含めてほぼ全部見ています)。

◇ ◇ ◇


flier編集部

本の要約サービス「flier(フライヤー)」は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだりしただけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。

通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されており、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。

このほか、オンライン読書コミュニティ「flier book labo」の運営など、フライヤーはビジネスパーソンの学びを応援しています。

flier_logo_nwj01.jpg

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

HSBC、第1四半期は25%減益 関税巡る経済リス

ビジネス

ドイツ銀行、第1四半期は予想上回る39%増益 関税

ビジネス

独消費者信頼感、5月は改善 関税巡る不確実性なお重

ビジネス

アマゾン、ネット通信提供へ衛星第1弾打ち上げ スタ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中