中国経済の「失敗」は、習近平の「赤い進歩主義」が招いた必然の結果だった
ISSUES 2024: CHINESE ECONOMY
当初、中国の市場改革は農村重視の姿勢を打ち出し、貧しい農民に多大な恩恵をもたらしたが、その後の江沢民と胡錦濤の時代になると、都市重視に舵を切った。外国からの投資の急増に伴い、輸出主導の製造業はかつてない利益を享受した。
一方、農村は膨大な余剰労働力を都市に供給し、人件費を低く抑える役割を担った。2000年代には土地と不動産が成長のエンジンとして浮上したが、その結果として富の極端な偏在が進み、中国版の「悪徳資本家」を生み出す一方、大多数の国民は家を買うのも困難になった。
成功の根拠が問題の原因
習の課題は古い市場改革モデルの行きすぎを修正し、新モデルに移行することだった。そのために反腐敗運動を開始し、共同富裕論を唱えて公平な経済成長を強調した。
19世紀末から20世紀前半のアメリカが金ぴか時代から社会・政治の革新を目指す「進歩主義時代」に移行したように、習の中国は「赤い進歩主義時代」に突入したのだ。かつてのアメリカと同じ種類の問題に、中国はトップダウンの手法と共産党流の大衆扇動で対処しようとしている。
習はそこに個人への極端な権力集中と統制強化、イデオロギー支配を付け加えた。経済では公的部門重視に回帰し、野心をあらわにした外交を推し進め、ゼロコロナ政策を強制した。ゼロコロナは現在の経済的停滞を引き起こした唯一の原因ではないが、20年以上にわたり蓄積されてきた経済的不均衡と政治的緊張を悪化させたのは確かだ。
金ぴか時代から正しい教訓を引き出せば、学べることは多い。重要なのは単純に「成功」や「失敗」と決め付けるのではなく、善悪さまざまな結果を正しく認識することだ。エコノミストの経済発展論は、GDPの伸びを進歩と同一視する傾向がある。さらに「成功」の理由を少数の単純な要素に求め、同じ手法を世界の他の場所にも「コピー」できると考えがちだ。
冷戦の終結によってアメリカは究極の勝利を手にし、揺るぎない超大国という地位を確立した。アメリカ国内では、自由市場があらゆる問題への最善の解決策を提供するという熱い信念が「新自由主義」の名の下に広まった。
だが、新自由主義への信頼は08年に失墜する。規制緩和と米金融機関の長年にわたる無謀なリスクテイクが世界金融危機を引き起こし、ウォールストリート(大手金融機関や大企業)は救済されたが、メインストリート(一般社会)は痛手を負った。