爆発に向けたカウントダウン──米銀行の連続破綻は必然だった
Inevitable Collapse
ファースト・リパブリック銀行の株価は今年4カ月で97%下落していた HYUN JOO JINーREUTERS
<アメリカの銀行史上2番目の規模で破綻したファースト・リパブリック銀行の終焉は、いくつもの火種が爆発するカオスの中で起きた>
週末に考え抜いた末の決定だった。
米金融当局は5月1日の月曜日の早朝、経営不振に陥っていたファースト・リパブリック銀行(FRC)を公的管理下に置き、事業の大部分をJPモルガン・チェースに売却すると発表した。FRCの破綻は、アメリカの銀行破綻としては史上2番目の規模だ。
これがFRCだけの問題なのか、それとも米金融界全体の危機を意味しているのかは、これから熱い議論の的になるだろう。いま確かなのは今回の破綻が、米金融界でいくつもの火種が爆発して起きていたカオスの延長線上にあるということだ。
3月上旬、カリフォルニア州に拠点を置くシルバーゲート銀行が暗号資産(仮想通貨)の下落などで経営状態が悪化し事業を閉鎖。
続いてシリコンバレー銀行(SVB)が高金利に加え、スタートアップ企業やワイン産業への融資に偏った事業内容が原因で破綻した。米金融機関としては2008年の金融危機以降、最大の規模だった。
さらにその後、ニューヨークを拠点とするシグネチャー銀行が取り付け騒ぎにより破綻。米政府は3つの銀行全てを管理下に置く決定を下した。
FRB(米連邦準備理事会)や米連邦預金保険公社(FDIC)などが迅速に動き、これら全ての銀行の預金を全額保護すると発表したが、一連の騒動の余波はヨーロッパにまで到達。メガバンクのクレディ・スイスが経営不安に陥り、ライバル銀行に救済される羽目になった。
この余波の中で何とか持ちこたえていた中堅銀行のうち、最も打撃を受けていたのがFRCだ。SVBが破綻した翌週、FRCの株価は1日で62%下落し、過去10年で最低の水準を記録。その後、FRBや大手銀行が資金注入を行ったが、事態は悪化の一途をたどった。
預金1000億ドル流出
FRCの健全性がさらに不安視されるなかで、S&Pグローバルが3月15日、FRCの格付けをジャンク(投資不適格)級に引き下げた。同22日にはFRBが金利引き上げの継続を決め、FRCの立て直しは絶望的になった。