最新記事
キャリア

40、50代こそリスキリングが必要...なのに「勉強すべき人ほど勉強しない」日本の会社員

2023年3月17日(金)17時50分
flier編集部

230316fl_rki02.JPG

ジャパン・リスキリング・イニシアチブの後藤宗明代表理事

2つ目は、企業がデジタル人材による新規事業の創出を迫られていること。デジタル化を推進しようにも、日本では空前のデジタル人材不足です。海外のテック人材に目を向けると、年収2000万円以上の世界。リスキリングのためのコストは採用コストの6分の1といわれていますから、新たにデジタル人材を採用するよりも、自社の人材をリスキリングするほうが現実的なのです。

大賀 HR総研のリスキリングに関するアンケート結果によると、大企業の86%が「取り組む必要がある」とし、企業規模が大きいほど、その必要性を感じていることが明らかになりました。経営者や人事の視点に立つと、本来リスキリングが必要な層がリスキリングをしていないことが根深い問題であるように思います。

後藤 おっしゃるとおりです。リスキリングを最優先でおこなうべき対象は、業務のデジタル化がほぼ進んでいない職場のボトムアップ。そこでカギになるのは、40代、50代のベテラン層の配置転換に向けたリスキリングです。福利厚生の一環としてオンライン講座を提供している企業は多い。ですが、「好きなときに学んで」と従業員にゆだねていると、学んでほしい人に学んでもらえない。さらには、リスキリングが差し迫って必要ではない人ほど、新しいスキル習得に意欲的で、その後さらなる活躍の場を求めて他社に転職してしまいます。

社長自身がリスキリングを体現できているか?

大賀 企業がリスキリングを進めていくうえで、企業のマネジメント上の課題もありますね。

後藤 その通りです。2022年秋、岸田政権が「リスキリング支援」に今後5年間で1兆円の予算を投じると宣言しました。リスキリング推進自体はよいことですが、経営者が「リスキリング=研修」と捉えて人事部に丸投げにすると、本来の「成長する職種への転換」という目的から離れてしまう。新たに習得したスキルを業務でどう活かすのかが見えていないのです。実際、デジタルのスキルを習得した人材にどう活躍してもらいたいかが明確な事業部門が主導しているリスキリングはうまくいきやすい。

リスキリングは経営戦略の一環として重要であり、社長がその意思決定に関わるべきです。ところが、多くの経営者が「デジタルの活用で何ができるか」を理解していないために、デジタル化が進まない。カギとなるのは社長自身のリスキリングです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中