プーチンがただ一人殺せない反体制派ナワリヌイに差し向けられた「生物兵器」
Navalny dying by illness may be Putin's end game: Professor
牢獄からリモートでモスクワ郊外の裁判所に出廷したナワリヌイ(2022年5月24日) Evgenia Novozhenina-REUTERS
<これまでプーチンに敵対する者は暗殺されるか不審死を遂げてきたがナワリヌイは刑務所の中で生き続けているのはなぜか>
収監中のロシア反体制派指導者で、ウラジーミル・プーチン大統領に対する批判を続けていることで知られるアレクセイ・ナワリヌイが1月9日、2022年の大晦日を独房で過ごしたことをツイッターで明かした。
その後、刑務所の看守がインフルエンザにかかった受刑者を「生物兵器」として自分の独房に送り込んできたと主張。弁護士は、ナワリヌイがインフルエンザの症状を発症して体調を崩したと報告した。
現時点では、ナワイヌイの症状が命にかかわるものであることを示す兆候はない。だがある大学教授によれば、ナワリヌイが最終的に「自然死」することが、プーチンの究極の目標かもしれないという。
プーチンが権力を握ってから20年超の間に、彼と敵対した数多くの人物が暴力的な死や不審な死を遂げてきた。ナワリヌイは法廷侮辱罪や公金横領罪などで有罪評決を受けて2021年2月から収監されており、あと12年は刑務所での生活が続く見通しだ。
米ジョージ・メイスン大学公正政策大学院のマーク・キャッツ教授は本誌に対して、「もしもプーチンがナワリヌイの死を望むなら、容易にそうすることができたはずだ」と指摘した。「プーチンは、国家が直接手を下す形ではなく、ナワリヌイが病気で死んでくれた方が、自分にとって都合がいいと考えているのかもしれない」
「有名すぎて殺せない」
米ニューハンプシャー大学のローレンス・リアドン准教授(政治学)は本誌に、ナワリヌイが今も生きている理由は単純に、彼が今や「有名すぎて殺せない」からだと指摘した。
「ナワリヌイは弁護士であれ政治家であれオリガルヒ(新興財閥)であれ、プーチンにとっての政敵を怖がらせるのに便利なツールとして利用されている」と彼は述べた。「問題は、プーチンがかつてナワリヌイの暗殺に失敗していることだ(ナワリヌイは2020年に神経剤ノビチョクを使った攻撃を受けたが生き延びた。ロシア政府はこの件について関与を否定している)。この一件でナワリヌイは正義の擁護者として世界的に有名になり、欧州議会から人権や自由を擁護する活動を行う個人を称える「サハロフ賞」を授与され、メディアやソーシャルメディアを活用してロシア内外で反プーチンの政治運動を確立した」
キャッツは、インフルエンザにかかった受刑者がナワリヌイの独房に入れられた一件については、間接的にナワリヌイ殺害を狙った動きではないかもしれないと述べた。