芸人から「億り人」になった井村俊哉、今度はファンド運営へ
相次ぐ井村銘柄の急騰、一方で感じた「戸惑い」
井村銘柄の急騰ぶりに、本人は当初「率直に戸惑いを感じた」という。東証上場企業の全開示資料のタイトルをチェックし、変化を探し求めて資料を読み込み、時には取材もして選び抜いた銘柄だが、自身の投資行動自体が株価変動を引き起こしたことを自覚したためだ。
いろいろな思いはあったが、最近は気持ちが固まり、「市場の期待に応える責任感が芽生えた」。その文脈で、投資するだけでなく、企業の投資家向け広報の改善提案などにも取り組む。
「日本一株式投資に時間を費やしている」と自負
井村氏の生活は、すべてを投資に捧げていると言っても過言ではない毎日だ。睡眠時間こそ確保するものの、投資に費やすのは十数時間、「心持ちからすると24時間」。投資に打ち込む環境を作ってくれる家族と過ごす時間は「コミュニティーを維持するコスト」と割り切り、土日も調べものなどに没頭する。株式以外に趣味もなく、「時間や熱量だけは負けない。日本一時間を使っているという自負がある」と言い切る。
個人投資家として成功した井村氏だが、生活が派手になったわけではない。芸人時代は昼食にノーブランドの柿の種をつまみ、著書『年収3万円のお笑い芸人でも1億円つくれたお金の増やし方5.0』でコストパフォーマンスのよい「神商品」として挙げた納豆は、いまでもよく口にする。もっとも、最近は時間効率や健康により気を使うようになった。
井村氏の投資哲学を形作り、衝撃を受けた書物として、ベンジャミン・グレアムの『賢明なる投資家』、ウィリアム・J・オニールの『成長株発掘法』、ピーター・リンチの『株で勝つ』を挙げた。自身の銘柄選択はこの3冊でほとんど語れるという。2023年の注目業種では、引き続き石炭と地銀を挙げたほか、グロース(成長)株と一括りにされて昨年に売られながらも、成長力のある銘柄に関心を寄せている。
*インタビューは昨年12月26日に実施しました。
(インタビュアー:内田慎一、勝村麻利子 編集:久保信博)