ロシア産ガス、供給停止に備え日本で「プランB」議論 最終的には世界で争奪戦突入か
経産省幹部は「ガスを止めるか、契約に基づいて出すかはロシア政府次第」と話す。
ただ、実際にロシアからの供給が停止した場合、調達に向けた企業の契約交渉だけではすべての量を確保することは現実的に難しい。
日本エネルギー経済研究所専務理事の小山堅氏は「天然ガスは、短期的な代替供給源は存在していない。ロシアの供給が止まった分、世界全体の供給のパイが小さくなり、小さくなったパイをみんなで取り合う構造になる」と述べ、世界中でLNG争奪戦が始まると危惧する。
資源エネルギー庁のある幹部によると「サハリン2」の調達価格は10ドル程度と言われているなか、スポット価格を50―60ドルとすれば「2―3兆円追加コストが増えると試算できる」という。
大阪ガスの藤原社長は、長期契約中心に調達しているものの、スポットでの調達となった場合、「日本のエネルギー価格は高騰する。暮らしやビジネスに相当影響を与える」と懸念する。
このほか、緊急対応策として、石炭などを使った火力発電の稼働を強化することも選択肢として考えられる。「今回のエネルギー価格高騰で脱炭素はいったん見直しが必要」(元経産省幹部)との極論もあるが、「金融市場は世界的に脱炭素。シェール開発など火力発電関連にファイナンスは付きにくい」(自民党中堅議員)のが実情。どこまで補えるか慎重な見方もある。
原発再稼働のスケジュールを早めることも「この夏の参院選前は難しい」(与党関係者)とされ、さらに政治的にもハードルが高い。
最後のカード
資源エネルギー庁幹部は、需要側に対応を求める「節電」などには否定的で、「工場の操業が下がったり、国民生活にも影響が出る」として、あくまで最後のカードとして考えているという。
一方、専門家からは、より厳しい見方も出ている。
住友商事グローバルリサーチ、経済部担当部長の本間隆行氏は「調達にめどがつく間は、細かいことを積み重ねて、需要を減らす算段を付けないと、今までの生活ができない」と指摘する。
小山氏も電力やエネルギー供給を止めないことが最重要事項となるとし「東日本大震災後には天然ガス、石炭、石油と、とにかく全て使い、足りない分は節電でやった。似たようなことが起こるのではないか」とみている。
(清水律子 竹本能文 編集 橋本浩)
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