デフォルト目前のロシア対外債務 その可能性と影響まとめ
◎投資家が資金を受け取れる可能性
欧米とロシアが互いに制裁を実行しているため、ロシアが支払い資金を移動させるだけでなく、外国投資家がそれを受け取るのもわずらわしい構図になっている。
米財務省外国資産管理室(OFAC)は2日、米国人がロシアの財務省、中銀、政府系ファンドの発行した「債券ないし株式に絡む利子、配当、償還金」の受け取りに伴う金融取引を承認した。だが、承認期間は5月25日までで、その後は年末までにロシアは20億ドル近い対外債務の支払い期限がある。
◎デフォルトの現実味
今年2月まで、ロシアの対外債務がデフォルトを起こすとは考えられず、国際金融市場では額面を上回る水準で取引されてきた。状況を一変させたのは欧米の厳しい制裁で、今やロシアの外貨建て債は価格が低迷し、一部は額面の1割程度に沈んでいる。
16日が利払い期日となるユーロ債を含めて、大半の外貨建て債には30日の支払い猶予期間が設定され、この期間が15日という債券もある。ドル以外の支払い通貨条項を持つ債券はわずかで、このユーロ債はドルで支払わなければならない。
アナリストの話では、猶予期間終了までに全額ドルで支払えないか、部分的に他通貨で支払った場合は、デフォルトとみなされる。
◎デフォルトの影響
デフォルトに陥った国は、国際金融市場で資金調達できなくなる。ロシアは既に事実上、国際金融市場から閉め出されているものの、デフォルトが起きればその影響はもっと広い範囲に及んでくる。
まず、破綻リスクに対する保険の意味合いを持つクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の投資家による支払い要求に直面しかねない。JPモルガンの見積もりによると、支払いが必要なCDSの残高は約60億ドルに達する。
さらにロシアの対外債務を保有しているのは、国際的な資産運用会社だけはない。セントロ・クレジット・バンクのエコノミストでロシアを拠点にしているエフゲニー・スボロフ氏は「多くのロシア人投資家が西側銀行の口座を通じて購入した。ロシアの外貨建て債の主要債権者は、ロシア人投資家ではないかとの疑いが濃い」と指摘した。
ロシアの銀行も、ロシアの外貨建て債を資本バッファーに組み込んでいるとすれば、今後問題になる恐れが出てくる。また、ロシア企業は頻繁に国際金融市場で資金調達し、合計1000億ドル近い外貨建て債を抱えるだけに、ソブリン債のデフォルト地域に置かれることによる重圧が大きくなる。
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