最新記事

経済制裁

デフォルト目前のロシア対外債務 その可能性と影響まとめ

2022年3月16日(水)11時30分

◎投資家が資金を受け取れる可能性

欧米とロシアが互いに制裁を実行しているため、ロシアが支払い資金を移動させるだけでなく、外国投資家がそれを受け取るのもわずらわしい構図になっている。

米財務省外国資産管理室(OFAC)は2日、米国人がロシアの財務省、中銀、政府系ファンドの発行した「債券ないし株式に絡む利子、配当、償還金」の受け取りに伴う金融取引を承認した。だが、承認期間は5月25日までで、その後は年末までにロシアは20億ドル近い対外債務の支払い期限がある。

◎デフォルトの現実味

今年2月まで、ロシアの対外債務がデフォルトを起こすとは考えられず、国際金融市場では額面を上回る水準で取引されてきた。状況を一変させたのは欧米の厳しい制裁で、今やロシアの外貨建て債は価格が低迷し、一部は額面の1割程度に沈んでいる。

16日が利払い期日となるユーロ債を含めて、大半の外貨建て債には30日の支払い猶予期間が設定され、この期間が15日という債券もある。ドル以外の支払い通貨条項を持つ債券はわずかで、このユーロ債はドルで支払わなければならない。

アナリストの話では、猶予期間終了までに全額ドルで支払えないか、部分的に他通貨で支払った場合は、デフォルトとみなされる。

◎デフォルトの影響

デフォルトに陥った国は、国際金融市場で資金調達できなくなる。ロシアは既に事実上、国際金融市場から閉め出されているものの、デフォルトが起きればその影響はもっと広い範囲に及んでくる。

まず、破綻リスクに対する保険の意味合いを持つクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の投資家による支払い要求に直面しかねない。JPモルガンの見積もりによると、支払いが必要なCDSの残高は約60億ドルに達する。

さらにロシアの対外債務を保有しているのは、国際的な資産運用会社だけはない。セントロ・クレジット・バンクのエコノミストでロシアを拠点にしているエフゲニー・スボロフ氏は「多くのロシア人投資家が西側銀行の口座を通じて購入した。ロシアの外貨建て債の主要債権者は、ロシア人投資家ではないかとの疑いが濃い」と指摘した。

ロシアの銀行も、ロシアの外貨建て債を資本バッファーに組み込んでいるとすれば、今後問題になる恐れが出てくる。また、ロシア企業は頻繁に国際金融市場で資金調達し、合計1000億ドル近い外貨建て債を抱えるだけに、ソブリン債のデフォルト地域に置かれることによる重圧が大きくなる。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・【まんがで分かる】プーチン最強伝説の嘘とホント
・「ロシア人よ、地獄へようこそ」ウクライナ市民のレジスタンスが始まった
・ウクライナに「タンクマン」現る 生身でロシア軍の車列に立ち向かう
・ウクライナ侵攻の展望 「米ロ衝突」の現実味と「新・核戦争」計画の中身


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

S&P、アダニ・グループ3社の見通し引き下げ 米で

ワールド

焦点:ウクライナ巡り市民が告発し合うロシア、「密告

ワールド

台湾総統、太平洋3カ国訪問へ 米立ち寄り先の詳細は

ワールド

IAEA理事会、イランに協力改善求める決議採択
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中