日本や韓国の経済「減速」の原因は、企業のアメリカ的「短期主義」にあり
SQUID GAME ECONOMIES

PHOTO ILLUSTRATION BY KIM HONG-JIーREUTERS
<日本も韓国も「経済の金融化」を経て、すでにアングロサクソン型の経済構造へと移行したことで株主の短期的な利益を追求するようになった>
世界で最も視聴されたドラマの1つ、『イカゲーム』が浮き彫りにするのは、韓国の富裕層と貧困層の間で広がる格差だ。同様の格差は今や、多くの先進国に存在している。
韓国が経済的不平等に苦しんでいるのは不可解だと思うかもしれない。往年の「東アジアの奇跡」の核は、高い成長率と小さい格差にあったからだ。
1960年以降の約30年間、東アジア諸国の経済は「クズネッツ曲線」仮説のとおりに進展していた。経済発展が始まると、当初は格差が拡大するが、成長が持続するなかで次第に縮小するという仮説だ。だが、こうした平等型の成長は遅くとも2000年代前半には終わった。
現代韓国の資本主義は、より有害なようだ。理由はおそらく、投資削減や低成長、高格差という側面を持つアングロサクソン型資本主義への接近にある。
実際、最近のデータが示唆するように、韓国と日本は今やアングロサクソン陣営に参入している。国民所得全体に上位10%の所得が占める割合は世界的に増加しているものの、特にアメリカと東アジアでその傾向が強い。2010年代の上位10%の所得シェアは、アメリカが最大の45%超。韓国は45%で、日本は40%だった。
さらに、韓国のGDP成長率は日本と同じ道をたどり、この20年間に徐々に低下している。1980~90年代の年間成長率は6~7%だったが、2000年代前半に潜在成長率が約5%になり、同年代後半は3.7%。10年代前半は3.4%で、同年代後半には2.8%に落ち込んだ。
東アジアの先進国を「アメリカ化」に駆り立てているのは何か。1つの答えは、GDPに金融部門が占める割合が高まり、配当金支払いが企業利益の再投資の規模を上回る「経済の金融化」だろう。
1997年の通貨危機の際、IMFによる救済の条件とされた経済金融化に乗り出して以来、韓国経済は株主中心のアメリカ型資本主義に近づいていった。企業が利益を再投資する東アジア的慣行と対照的に、金融市場の大幅開放で自社株買いが解禁され、配当金支払いの増加が奨励された。以来、国内成長や雇用創出が縮小する一方、外国人の韓国株購入が激増した。
現在、韓国の大企業はアメリカ式に、純利益の約4割を株主に配分している。17年には、サムスンが配当金を1年ごとではなく、四半期ごとに支払うようになった。年配当は、短期主義のアングロサクソン型と異なる東アジア型資本主義の長所と見なされていたのだが。