習近平に愛され捨てられたジャック・マー 転落劇の内幕
投資顧問会社BDAチャイナのダンカン・クラーク会長は「ジャック(馬氏)はあまりにも挑発的で、習氏の新たな統治姿勢からはみ出したため、政府が大改革を始めたことを知らせるための最初の標的になったのは、当然の成り行きだ」と語る。
馬氏は渡航して外国首脳と定期的に交流し、海外から杭州市のアリババ本部を訪れるVIPも後を絶たなかったとクラーク氏は指摘する。
トランプ氏との会談後も国際交流は続いた。2018年から2020年にかけては、グテレス国連事務総長、ヨルダンのラニア王妃、マレーシアのマハティール前首相など、そうそうたる顔ぶれと会談を持った。
馬氏に近い人物によると、杭州市の本部にはアリババ博物館を擁するビルがあり、馬氏らが海外からの訪問客をもてなしていた。また馬氏は、外国政治家との会談を中国のための「非公式外交」と位置づけ、楽しんでいたという。
今は普通の人
関係者らによると、アント・グループ上場中止からの数週間で、馬氏は習氏の取り巻き少なくとも2人に面会を願い出たが、いずれも却下された。
政府筋によると、馬氏は続いて今年、習氏に直接書簡を送り、残りの人生を中国農村部の教育に捧げたいと申し出た。馬氏は元英語教師。習氏は5月、中国高官らとの会合で書簡に言及したという。
書簡についてメディアが報じるのはこれが初めて。習氏がこの申し出を承認したか、また返答したかについて、ロイターは確認できなかった。馬氏が書簡を執筆した正確な時期も特定できなかった。
アリババ傘下の香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは先月、馬氏が「環境問題に関する農業・技術研究ツアー」のために欧州を訪れたと報じた。先週の記事では、白い防護ガウンを着て植木鉢を持つ馬氏の姿が掲載された。今後も農業インフラや植物育種に携わる欧州企業や研究機関を歴訪する予定だと記事は報じている。
アリババの共同創業者である蔡崇信(ジョセフ・ツァイ)副会長は6月、珍しく馬氏に関してCNBCのインタビューに答え、「彼は今、身を低くしている。私は毎日彼と話をする」とした上で、「ジャックが強大な権力を握っているというのは当たらないと思う」と付け加えた。
「彼はあなたや私と同じく、ごく普通の一個人だ」と蔡氏は語った。
(Julie Zhu記者 Kane Wu記者)
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