最新記事

自動車

米GMと韓国LG、相次ぐEVバッテリー発火事故で「仮面夫婦」の声

2021年9月20日(月)09時30分

調査会社のJDパワーのタイソン・ジョミニー副社長は「米EV大手・テスラですら、発火事故で影響を受けたことはない。EV移行の流れが鈍ることはないだろう」と話す。

代わりの相手が見つかるまでの「仮面夫婦」

ただ、事情に詳しい関係者によると、GMとLGは高額なリコール問題が宙に浮いたままで、関係が悪化している。両社の関係は「仮面夫婦」(韓国人アナリスト)と呼ばれる状態に陥っており、すぐに代わりの相手が見つからないので、離婚せずにいるだけの状態だ。

ボルトを製造するGMのミシガン工場は操業を停止し、従業員1000人が9月末まで自宅待機となっている。

GMのジェイコブソンCFOは10日、18億ドルのリコール費用について、LGとの間で「ハイレベルの協議」を行っており、LGが負担してくれることを期待していると述べた。

だが、GMとLGが負担するコストは、最終的にもっと膨らむ恐れがある。

GMは350億ドルを投じて、独自のパウチ型リチウムイオンバッテリー、アルティウムを搭載した次世代EVや自動運転車の立ち上げを進めている。アルティウムはオハイオ州とテネシー州にあるLGESとの合弁工場で生産し、「GMCハマーEV」などのモデルに採用する計画だ。

しかし、8月下旬のボルトでのリコール発生を受けて、GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は、今後のバッテリー工場について新たなパートナーを模索する可能性に含みを残した。

GMのアルティウムバッテリーは、ボルトに搭載されているLG製とは設計やサイズ、化学的組成が異なる。また、GMの幹部によると、アルティウムバッテリーの製造と品質管理は、LGではなくGMが担うという。

LGとその関連会社は、GMと同様に大きな問題を抱えている。

LG製バッテリーに関連してリコールが発生したのは、ボルトだけではない。韓国の現代自動車は今年初め、中国で製造されたLG製バッテリーが原因となって発火事故が起きたことから、全世界で「コナEV」約7万6000台をリコールした。

テスラのイーロン・マスクCEOは最近のツイッターへの投稿で、GMとLGのパウチセル技術について「大型のパウチセルは熱暴走が発生する可能性が、危険なほど高い」と指摘した。

LGESは45億ドルを投じて米国に2カ所のバッテリー工場を建設する計画だが、生産するセルの種類は明らかになっていない。セルの生産体制変更により、投資計画に遅れが生じる可能性もある。

(Paul Lienert記者、Heekyong Yang記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・インド、新たな変異株「デルタプラス」確認 感染力さらに強く
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中