最新記事

仮想通貨

E.マスク、ビットコインによるテスラ車購入を停止 「マイニングによる環境負荷を懸念」

2021年5月13日(木)12時16分

米電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、暗号資産(仮想通貨)のビットコインを使ったテスラ車購入を停止したとツイートした。写真はビットコインのイメージ。1月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

米電気自動車(EV)メーカー、テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は12日、暗号資産(仮想通貨)のビットコインを使ったテスラ車購入を停止したとツイートした。

ビットコインのマイニング(採掘)で使用される化石燃料に関する懸念が理由とした。

ツイートを受け、ビットコインは急落し、一時3月上旬以来の安値を付けた。テスラは2月、ビットコインに約15億ドル投資したと明らかにし、その際、ビットコインは約20%急騰していた。

マスク氏は、テスラがビットコインを売却することはなく、マイニングがより持続可能なエネルギーに移行し次第、ビットコインを決済に使用する意向だとした。

また、ビットコイン取引にかかるエネルギーの1%未満の使用で済む他の仮想通貨にも着目していると述べた。

マスク氏は3月、テスラ車の購入にビットコインの利用が可能になったと表明していた。

ビットコインは、処理速度の速い高性能のコンピューターで複雑な数学的パズルを解くことで作成される。エネルギー集約型のプロセスで、現在は石炭など化石燃料を使用した電力に依存している場合が多い。

ケンブリッジ大学と国際エネルギー機関(IEA)が発表した最新のデータによると、こうしたビットコインのマイニングが消費する年間のエネルギーは現在のペースでは、オランダの2019年の消費量と同水準になるという。

オズモーシス・インベストメント・マネジメントのベン・ディア最高経営責任者(CEO)は2月、テスラのビットコイン保有が明らかになった直後に「ビットコインのマイニングから生じる二酸化炭素の排出量について非常に懸念している」と述べ、テスラ車購入でのビットコインの利用に疑問を呈していた。

オズモーシスはサステナブル投資を手掛け、運用資産は約22億ドル。複数のポートフォリオでテスラ株を保有している。

OANDAのシニア市場アナリスト、エドワード・モヤ氏は12日、マスク氏はサステナビリティー(持続可能性)を重視する投資家に先行していると指摘。「ビットコイン採掘による環境への影響は、暗号資産市場全体にとって最大のリスクの一つだが、ビットコインがアルゼンチンやノルウェーよりも多くの電力を使用しているというニュースは過去数カ月にわたり無視されてきた」と語った。

また、ペッパーストーン(メルボルン)の調査責任者、クリス・ウェストン氏は、マスク氏の今回の対応はビットコインにとって打撃となるが、同通貨がもたらす排出量を認めるものだと指摘。「テスラは環境に優しいイメージがあるが、ビットコインは明らかにそれとは正反対だ」と述べた。

マスク氏は、デジタル通貨を強く支持する一方で、クリーンなテクノロジーも提唱している。

マスク氏は「仮想通貨は多くの面で良いアイデアであり、有望な未来があると信じているが、環境に大きな犠牲を払うことになってはならない」と語った。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 5
    「ワークライフバランス不要論」で炎上...若手起業家…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 8
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国」...写真を発見した孫が「衝撃を受けた」理由とは?
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    建物に突き刺さり大爆発...「ロシア軍の自爆型ドロー…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶり…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中