ビットコインはインフレヘッジ手段として賢明だが、不安はある
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アダム・スミスは貨幣価値と意思の関係に言及した MONDADORI PORTFOLIO/GETTY IMAGES
<供給量が限られているため物価上昇時の損失回避に役立つが、結局は将来の値上がりを夢見ているだけではないか。もしもハッカーが別の仮想通貨を作ったら?>
ビットコインは米ドルのような政府発行の不換紙幣と異なり、供給量が限られている。そのためインフレに対するヘッジ、つまり損失回避の有効な手段になると思われている。
一般に限られた供給と旺盛な需要は価格を上昇させる。その点、ビットコインが流通するデジタル空間には、供給量を増やして価値を低下させるFRB(米連邦準備理事会)のような中央銀行は存在しない。
米政府がドルと金の交換を停止して金本位制を崩壊させたのは1971年。それ以降、事実上ドルの価値を支えるものは基軸通貨への「信仰心」だけになったという見方もある。
1975年から新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が本格化する2020年3月までに、アメリカのマネーサプライ(通貨供給量)は約2734億ドルから約4兆ドルに増加した。
その後はコロナ対策で大型景気刺激策が実施されたこともあり、2020年11月には約6.5兆ドルまで膨れ上がった。さらにジョー・バイデン大統領は3月、1.9兆ドルの新たな景気刺激策を成立させた。
一部には、限られた商品やサービスを買うためのドルが増えれば、インフレを招くという懸念もある。そうなれば、少額の預金保有者や年金生活者は打撃を受ける。銀行預金は高金利の商品でも0.5%以下のものが多く、年金などの物価調整金の伸びは一般的に控えめだ。
一方、ウイルスの感染拡大を抑えるためのロックダウン(都市封鎖)でGDPが縮小したにもかかわらず、不動産市場の一部は好調だ。
この時期に失業を免れた人々、特に自宅のパソコンでリモートワークができる高学歴層は大都市から郊外や地方に引っ越した。その結果、一部の郊外では不動産価格が上昇している。
1974年にノーベル経済学賞を受賞したフリードリヒ・ハイエクは、金融機関が喜んで受け入れ可能な民間通貨の創設を提唱し、価値の安定こそが受け入れられるための重要な条件だと主張した(ハイエクは92年に死去。ビットコイン誕生は2009年のことだ)。
ビットコインのような仮想通貨は、ハイエクが思い描いていたものの一部なのか。この点については議論が続いているが、ビットコインの発行総量は2100万枚に制限されているため、供給量の増加によって価値が損なわれることはない。