最新記事

WTO

南アとインド、コロナワクチン特許権の適用除外要望 富裕国と途上国で合意至らず

2021年3月11日(木)12時49分

世界貿易機関(WTO)に加盟する富裕国は、貧困国向けに新型コロナウイルスワクチン生産を拡大するために80カ国以上の発展途上国が求めていた特許権の適用除外を認めなかった。写真はインド・アーメダバードで1月12日、ワクチンを運ぶ人々(2021年 ロイター/Amit Dave)

世界貿易機関(WTO)に加盟する富裕国は10日、貧困国向けに新型コロナウイルスワクチン生産を拡大するために80カ国以上の発展途上国が求めていた特許権の適用除外を認めなかった。

南アフリカとインドは、ジェネリックメーカーなどによるワクチン生産拡大につながる、WTOの「知的財産権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」ルールの適用除外を求め、発展途上各国の支持を得ていたが、国内に大規模な製薬産業を抱える英国、スイス、欧州連合(EU)各国、米国を含む西側諸国が反対した。

西側諸国は、知的財産権の保護によって研究とイノベーションが促されるとし、こうした権利を一時的に停止してもワクチン供給の急拡大にはつながらないと主張した。

WTOのTRIPS理事会では、昨年10月以来8回目となるこの問題を巡る協議を3時間行ったが、合意に至らなかった。提案の承認にはWTO加盟164カ国・地域の一致した支持が必要となる。

次回TRIPS理事会会合は6月8─9日に予定される。今回はその前の4月に2度にわたってこの問題を協議することで合意した。

WTOのオコンジョイウェアラ事務局長は9日、発展途上国での新型コロナウイルスワクチン生産を推し進める緊急措置を呼び掛け、生産拠点の整備は従来予想の半分以下である6─7カ月で可能という見方を示した。

ナイジェリアの元財務相で、最近まで途上国のワクチン普及を目指す国際組織「Gaviワクチンアライアンス」の理事長だったオコンジョイウェアラ氏は、先週にWTOトップに就任したばかり。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・フィット感で人気の「ウレタンマスク」本当のヤバさ ウイルス専門家の徹底検証で新事実
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...
→→→【2021年最新 証券会社ランキング】



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

快活クラブ会員など個人情報729万件漏えいの可能性

ビジネス

企業向けサービス価格、12月は2.9%上昇 人件費

ビジネス

日銀審議委員に小枝・早稲田大教授、安達委員の後任 

ワールド

原油先物2週間ぶり安値付近、弱い中国PMIや米欧気
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 2
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 3
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」で記録された「生々しい攻防」の様子をウクライナ特殊作戦軍が公開
  • 4
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 5
    オーストラリアの砂浜に「謎の球体」が大量に流れ着…
  • 6
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 7
    日本や韓国には「まだ」並ばない!...人口減少と超高…
  • 8
    「これは無理」「消防署に電話を」出入口にのさばる…
  • 9
    天井にいた巨大グモを放っておいた結果...女性が遭遇…
  • 10
    AI相場に突風、中国「ディープシーク」の実力は?...…
  • 1
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 2
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵を「いとも簡単に」爆撃する残虐映像をウクライナが公開
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 6
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 7
    いま金の価格が上がり続ける不思議
  • 8
    被害の全容が見通せない、LAの山火事...見渡す限りの…
  • 9
    「バイデン...寝てる?」トランプ就任式で「スリーピ…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 5
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 6
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 7
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    地下鉄で火をつけられた女性を、焼け死ぬまで「誰も…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中