展望2021:コロナ・パンデミック衰えず航空業界は正念場
いずれ旅客需要が19年の水準に戻っても、企業の出張抑制で特に国際線のビジネス需要は減る傾向だろう。その場合イールド(旅客1人に対する1キロメートルあたり収入単価)が下がり、事業収入は落ちる。イールド低下は大手には痛いが、低コストで運営できるLCCには有利に働く。
環境意識の高まりで鉄道と競争
航空業界には、環境問題への対応という課題もある。飛行機はもともと二酸化炭素(CO2)排出量が多く、環境団体から批判が高まっている。欧州では「飛び恥」と呼ばれることもある。米国では環境政策に注力するバイデン次期大統領が鉄道の拡張を支持しており、世界的に「飛行機ではなく、高速鉄道で」という動きが強まりかねない。
機関投資家や消費者からの環境対応イメージに配慮し、一般企業が飛行機の利用を抑えることも考えられる。フランス政府はエールフランスへの公的資金投入の条件にグリーンポリシーを付加しており、鉄道と競合する国内の短距離路線を廃止する方針も示している。
ANA・JAL統合論
コロナを機に、ANAとJALの統合論も再燃している。特に国際線は統合して1社化すべきなどの意見も聞かれるが、航空大手は国内線と国際線を併せ持ち、両者を結び付けるネットワークを持つことで成立している。何より国際線専従はイベントリスクに対して脆弱(ぜいじゃく)すぎる。ANAやJALが国際線専従だったなら、コロナ禍でとっくに破綻していただろう。
事実、国際線専従のシンガポール航空は危機にひんし、シンガポール政府が政府系ファンドを通じて1.2兆円を超える巨額支援を行っている。香港のキャセイ・パシフィック航空も同様だ。
両社のライバル関係により、価格だけでなく、サービスにも磨きがかかっている。競争原理は残したほうがいい。
(聞き手:白木真紀 )

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