最新記事

中国経済

中国当局、アリババ・テンセントなどIT大手の独禁法違反に空前の締め付け

2020年12月20日(日)10時16分

中国の当局が巨大IT企業による独占禁止法違反に対し、空前の締め付けに乗り出した。これはほんの序の口と言えそうだ。写真はテンセンとのロゴ。北京で8月撮影(2020年 ロイター/Thomas Peter)

中国の当局が巨大IT企業による独占禁止法違反に対し、空前の締め付けに乗り出した。これはほんの序の口と言えそうだ。

中国国家市場監督管理総局(SAMR)は14日、アリババ・グループ・ホールディングや騰訊控股(テンセント・ホールディングス)といったIT大手が後ろ盾になった複数の案件について、罰金を科すとともに調査開始を発表した。SAMRはかつてインターネット業界に対して「自由放任」の姿勢で臨んできたが、今後は方向転換し、さらに多くの案件を監視していく構えだ。

中でも「見せしめ」にしようと狙っている案件が、インターネット検索企業の捜狗(ソゴウ)を株主のテンセントが35億ドルで買収を強め、非公開化する計画だ。この問題を直接知る2人の関係者が明らかにした。

別の関係者によるとSAMRは、プライベートエクイティ企業MBKパートナーズによる中国オンライン自動車レンタル最大手CARに対する買収提案にも、目を光らせている。MBKは業界2位の企業を既に所有しており、独禁法違反の問題が生じるとの懸念からだという。

テンセントによる捜狗の買収については、SAMRは徹底検証することが見込まれているため、2021年の買収完了期限に間に合わなくなる可能性があるという。「この案件は今、大きな不透明感に直面しており、計画通り買収を完了できない確率は大きい」と関係者の1人は語った。

この関係者によると、検索エンジンは中国当局にとっては機微な分野であり、SAMRはテンセントが既に複数のセクターで主導的な地位を確立していることも踏まえて、対処していくことになりそうだ。この案件が世間から大きな注目を集めていることも、監視の標的にする一因という。

捜狗は今月、独禁法上の検証を受けるためこの案件を届け出た。中国のIT企業は最近まで自ら進んでこうした届け出を行うことはしておらず、珍しい動きだ。

政府文書によると、MBKもCAR買収計画について同様に届け出た。関係筋によると、MBKは傘下の自動車レンタル企業とCARを統合する計画だ。

テンセント、捜狗、MBKはコメントを控えた。SAMR、CARからはコメント要請への返信がない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中