最新記事

誤解だらけの米中新冷戦

TikTok・出会い系アプリ、中国への「流出」を防ぐには何が必要か【欧米vs中国】

RUSH TO KEEP OUT CHINESE CAPITAL

2020年9月16日(水)06時50分
エリザベス・ブラウ(ジャーナリスト)

市場の「見えざる手」が欧米企業を救ってくれないなら、欧米諸国の政府が救うしかない。中国の投資家を締め出すなら、「それに代わる十分な資金を提供しなければならない」と、モンゴメリーは言う。国内企業か同盟国の企業に自国企業の株式を取得してもらうようインセンティブを与える手もある。

さもなければ、政府が直接的に資金を注入することだ。ドイツはコロナ危機で打撃を受けた企業に融資と融資保証を提供するため、他国に先駆けて5000億ユーロの「経済安定化基金」を設置した。こうした枠組みを通じて、中国企業が狙う欧米企業にテコ入れする手も有効だろう。

出会い系アプリのグラインダーは16年に中国企業に買収された。だが米政府は19年、中国政府にユーザーの個人情報が流出する懸念があるとして、中国企業にグラインダーの売却を命じ、中国企業はこれに従った。

実はこの話には裏がある。グラインダーの売却先はデラウェア州に本拠を置く米企業だが、その共同オーナーは中国の検索エンジン「百度(バイドゥ)」の元幹部とシンガポール在住のビジネスマン。つまり、グラインダーは実質的に今も中国資本の傘下にあるのだ。

欧米諸国はこうした状況を指をくわえて見ているわけにはいかない。さもないと、非友好国の魔の手から知的財産と基幹技術を守れない。

From Foreign Policy Magazine

<2020年9月22日号「誤解だらけの米中新冷戦」特集より>

20200922issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月22日号(9月15日発売)は「誤解だらけの米中新冷戦」特集。「金持ち」中国との対立はソ連との冷戦とは違う。米中関係史で読み解く新冷戦の本質。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP29、会期延長 途上国支援案で合意できず

ビジネス

米債務持続性、金融安定への最大リスク インフレ懸念

ビジネス

米国株式市場=続伸、堅調な経済指標受け ギャップが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米景気好調で ビットコイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中