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世界へ広がる中国の鉱物資源買収 オーストラリア・カナダ両国が「待った」

2020年7月12日(日)12時57分

中国で強まる開発規制

アイバンホー・マインズの元マネジャー、デービッド・ホー氏によると、中国の鉱山会社が海外案件に積極的なのは、自国内の開発が制限されているためだ。

北京が本拠の鉱山会社幹部がロイターに語ったところによると、内モンゴル自治区の鉱物資源豊かなシリンゴルリーグ地域の約60%は環境保護策のため開発が制限されている。

山東黄金はトロント証券取引所上場のカナダのTMACリソーシズの買収認可を待っているところだ。TMACはカナダ北極圏で金を採掘している。同社株主は6月に買収を承認した。

駐カナダ中国大使のCong Peiwu氏は6月11日のロイターのインタビューで、「カナダ政府が、カナダに投資し事業を行おうとする中国企業に公正公平で差別的でない取り扱いをすることを引き続き望む」と述べた。

しかし法律専門家や安全保障アナリストによると、TMACのホープベイ鉱山が北極圏にある点が懸念を誘う可能性がある。マクドナルド・ローリエ研究所(オタワ)の上級研究員、ジョナサン・ミラー氏は、カナダ政府がこの件を阻止する可能性は「極めて高い」と語った。

中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]の孟晩舟副会長をカナダ政府が拘束したことをきっかけに高まった両国間の緊張は、中国政府が6月に、拘束しているカナダ市民2人をスパイ容疑で起訴したことでさらにエスカレートしている。

ミラー氏は「そうした点を踏まえると、(TMAC案件の)認可は非常に難しいだろう」と述べた。


Jeff Lewis Melanie Burton

[ロイター]


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