コロナショック後はマンションの買い時か──新築・中古マンションの価格推移から考える
不動産市場もコロナショックの影響を避けられない Juergen Sack-iStock
<世界経済を揺るがすコロナショックで、マンションが買いやすくなるかもしれない。新築と中古で異なる販売価格決定のメカニズムを知っておくとタイミングもわかりやすくなる>
*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年4月27日付)からの転載です。
これまで首都圏の新築マンション価格は上昇を続けてきた。(株)不動産経済研究所によれば、2019年の1戸当たりの平均価格は5,980万円(前年比+1.9%)、面積当たりの単価は7年連続上昇の87.9万円/m2(同+1.2%)となった。7年前(2012年)の価格(平均発売価格4,540万円、平均単価65万円/m2)を基準とすると、2019年の平均発売価格は約1.3倍、平均単価が約1.4倍に上昇している(図表1)。
首都圏の中古マンションの成約価格も7年連続で上昇してきた。東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によると、7年前(2012年)の価格(平均成約価格2,500万円、平均単価38万円/m2)を基準とすると、2019年の平均成約価格と平均単価はいずれも1.4倍となっている(図表2)。
しかし、現状ではコロナショックと呼ばれ始めた新型コロナウイルス感染症の拡大による世界経済の混乱は続いており、不動産市場への影響も避けられない。身近な不動産であるマンションにどのように影響するだろうか。過去の推移とともに検証してみたい。
新築マンション市場では、実は売り主が強い価格決定権を持ち、売り出す戸数を価格競争が生じない程度に調整して需給バランスをとることで価格を維持している。新築マンションの価格と発売戸数の推移を見てみると、戸数の減少とともに価格が上昇しており、両者は反比例している(図表3)。
注目したいのは、過去の市場崩壊の後もマンション価格がある程度維持されていた点である。平成バブル(1988~1989と定義)の崩壊の後には不動産価格は上昇し、価格が下がるまでに数年を要した。またリーマン・ショック(2008年9月)の後には2012年頃まで天井圏から1割弱程度の下落である4,500万円の水準を維持しながら2013年には上昇に転じ、2019年には平成バブルと同じ水準の価格にまで到達している。つまり経済が明らかに低迷しはじめても、マンション価格はすぐに下落するわけではない。
その理由は新築マンションの売り主の資金の流れを考えると分かる。新築マンション開発は仕入れから販売まで数年を要する一連のプロジェクトである。土地の仕入れ費用、建物の建設費、人件費などの費用は建物完成までに先行して投資する必要があり、計画の最終段階である販売により初めて費用が回収され、利益が計上される。プロジェクトにかけた数年間の投資の成果は販売した時の価格の上下で決まってしまうものであり、価格は簡単に下げることができない。
また、現在の新築マンションの売り主は大手不動産会社が中心で、中小不動産会社に比べて良好な資金調達環境にあることから、リーマン・ショック後に多少生じた投げ売りなどが生じにくいと考えられる。
しかしながら、コロナショックとは関係なく、2019年以降、発売戸数は明らかに減速しており、月別前年比で発売戸数が前年よりプラスとなった月は、2019年以降は8月(+21.1%)の1か月のみ、2020年1月は▲34.5%,2月は▲35.7%の大幅減となっていた(図表4)。上昇する価格に需要が追いついていなかったと見られ、これにコロナショックの影響が加われば、2020年もさらに発売戸数が落ち込むことが予想される。