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為替年越し用ドル調達コストが急騰 今年の特徴は「FRBへの不信感」
為替スワップ取引で、年末越えのドル調達コストが急騰している。年末越えのドル資金需要が高まるためベーシスは毎年この時期に上昇しやすいが、今年は季節要因によるものだけではないとの声も出ている。写真はワシントンで2015年3月撮影(2019年 ロイター/Gary Cameron)
為替スワップ取引で、年末越えのドル調達コストが急騰している。年末越えのドル資金需要が高まるためベーシスは毎年この時期に上昇しやすいが、今年は季節要因によるものだけではないとの声も出ている。市場では米連邦準備理事会(FRB)の金融調節に対する不信感もくすぶっており、金利高騰への警戒がドル調達コストを高止まりさせている可能性がある。
ベーシス急騰、「ショック」
日米金利差からの乖離幅を示すベーシスは一時125ベーシスポイント(bp)と前日の10bpから約12倍に拡大し、11カ月ぶりの高水準に達した。
ドル/円スワップのベーシス(上乗せ金利)は、ドル資金の需要過剰/供給不足を表す。例年12月が近づくと、期日が年末越えとなる1カ月物ベーシスは上昇する傾向にある。きょうの1カ月物の期日は年明けの1月6日。ベーシスの上昇は、年末越えのドル資金の確保を急ぐ国内勢の需要の強さを映すものだ
しかし、今年はFRBによる3度の利下げで日米金利差が縮み、ベーシスもこれまで低位安定傾向を示していただけに、足元の急騰は「それなりにショックがある」(金融機関)という。
実際、ロイターが10月に実施した国内主要生保の2019年度下期一般勘定運用計画調査では、ベーシスを含むドルヘッジコストの一段の低下を見込んで一部の生保がヘッジ付外債投資を増やす方針を示していた。
ベーシス込みのスワップ経由ドル調達コスト(ヘッジコスト)も、1カ月物で現在295bpと前日の179bpから大幅に上昇した。
ドル手当てに不安
今年のベーシス急騰の背景は、季節要因だけではない可能性もある。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング、主席研究員、廉了氏によると、国内勢は今年1―9月に約10兆円のドル建て債投資をしており、現在もドル需要が旺盛だ。それに加え「9月の金利急騰でFRBの信頼性が低下したことで、市場参加者の間では、いつまた金利が高騰するかもしれないという恐怖感が根強い」(廉氏)という。この警戒感がドル調達圧力に強めているとみられる。
米国の短期金融市場で流動性のベンチマークとなる翌日物レポ金利は9月17日に10%まで上昇し、2008年の金融危機以来の水準に達した。
市場では「最も潤沢な流動性」があるはずのレポ市場で、金融緩和下にも関わらず流動性不足からドル短期金利が急伸したことに加え、FRBの対応が後手に回ったことに不安の声が出ていた。
その後、FRBはオペを通じて膨大な流動性を供給しており、現在2週間以下のドル金利は安定しているが、ドル需要がしばしば供給を上回り、金利が上昇しやすい環境が続いているという。
年末越え資金については、ニューヨーク連銀が25日に越年の資金供給オペ(期日2020年1月6日)を実施したが、オペ予定額の250億ドルに対し、金融機関からは倍近い490億ドルの応札があった。
市場では「9月の失敗を経てFRBは例年より早く越年資金を供給したが、オペの規模は明らかに少な過ぎ、市場とのコミュニケーションにも不安が残る」(外国銀)との指摘が聞かれる。
一方、複数の関係者によると、FRBは9月にレポ市場で起きた混乱を防ぐための常設貸出制度(SRF)導入の是非の判断を、手続き上の課題が残っていることを理由に先送りする見通しだ。
市場参加者の間では、短期金利の動きを制御するFRBの対応が遅れているとの認識が定着しつつあり、ドル調達を巡る不安につながっている。
(編集:田中志保)
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