アメリカは財政赤字とドル安の政策ミックス 赤字ファイナンスの構造変化が後押し
膨らむ財政赤字とルービン元財務長官の警告
米財政赤字の急ピッチの拡大は、財政リスクプレミアムの拡大を通じて長期金利を押し上げ、リセッションのリスクを高めるはずだが、グローバルな景気減速や金融緩和によるマネーフローの変化で、米10年国債利回りは1.4%台と3年ぶりの低水準に収まり、米国に余裕を与えている。
米財政赤字の累積により米国債務残高はGDPの33%(2000年)から足元で78%まで膨らんでいるが、「とりあえず、何も悪いことが起こらない」(外国銀行)中で、トランプ政権は財政のアクセルを一段と強く踏み込む気配だ。
米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長は22日、長期的な経済成長を支援するために、米政府は減税措置を検討しており、来年の大統領選挙キャンペーン中に導入される可能性があるとした。
しかし、NECの初代委員長で元財務長官のロバート・ルービン氏は、14日、ワシントン・ポスト紙への寄稿で、米国で財政危機が起きていないのは、たまたま、いくつかの偶然が重なっているからに過ぎないという。
偶然とは、1)民間の設備投資が低迷し、民間と政府部門で資金の奪い合いが生じないこと、2)非伝統的金融緩和でFRBが潤沢な流動性を供給していること、3)金融市場が持続不可能な財政状況を長期にわたって無視する傾向があること──だという。
ルービン氏は、1990年に財政赤字膨張を背景に米長期金利が上昇し、その翌年にはリセッションに陥ったことを例に挙げ「我々が自国通貨で外国から借金する能力があるからといって、こうしたリスクを排除することはできない」(同)と警鐘を鳴らす。
森佳子
(編集・グラフ作成 佐々木美和)
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