最新記事

資産運用

資産形成を始めるなら若いほど有利──株と投信で資産防衛する方法

2019年6月10日(月)15時15分
井出 真吾(ニッセイ基礎研究所)

株は長期的には値上がりが期待できる

よく「株や投資信託は怖い」という声を聞く。確かに、以前は株も投信も怖いものだったが、近年は個人が長期的な資産形成を始める環境が整ってきた。日本の株式市場はバブルの清算を終え、米国など海外の株や投信も購入しやすくなった。金融行政・金融業界も個人の資産形成を後押しする方向に舵を切った。

さらに、若い世代は老後まで数十年という時間がある。これが最大の武器だ。「時間を味方につける」とはどういう意味か。そもそも株式というのは(株式を組み入れいている多くの投資信託も同様)、短期的には値上がりと値下がりを繰り返すが、長期では値上がりが期待できる。

なぜなら、株式の適正価格(理論価格)は(1)自己資本(資本金や過去に稼いだ利益の蓄積など)と(2)将来の予想収益(現在価値に換算)の合計で決まる(図表1)。一般に企業は稼いだ利益の一部を自己資本に加算する。赤字が続かない限り長期的には自己資本が増えるので、株価も上昇するということだ。

Nissei190603_data03.jpg

「時間を味方につける」積立投資とは?大儲けは狙わないが、大損も避ける

それでも日本では「株は上がらない」というイメージが強いのはなぜか。最大の原因はバブルだ。1980年代のバブル期は株価が適正価格より高くなりすぎたため(ピーク時は適正価格の4倍くらい)、その調整に20年近くかかった。この20年間は株価が少し上がるとすぐに下がることを繰り返したため、「株は上がらない」というイメージを植え付けられたのだろう。

しかし、2010年頃にようやく調整を完了すると、その後のアベノミクスや世界的な景気回復による企業業績の改善を受けて、適正価格も実際の株価も上昇した。

その様子を示したのが図表2だ。日経平均ベースの自己資本は、アベノミクス前から趨勢的に増えたことが分かる。これが株価の下値メドとなり、2000年代初頭の世界同時株安、2008年のリーマンショック、その後の株価急落時も概ね自己資本と同じ水準で下げ止まった。

株価が自己資本に見合う水準まで下落すると、それ以上は株を売る投資家が減るからだ。実際、日本株も米国株もリーマンショック前の水準をとっくに回復している。

Nissei190603_data04.jpg

今後も景気循環や政治不安などで株価が乱高下する場面はあるだろうし、バブルもいつか起きるだろう。「時間を味方につける」とは、こうした一時的な株価乱高下の影響をならすことだ。換言すれば、バブルに踊ることもなければバブル崩壊を悲観することもしない。

積立投資とは、大儲けを放棄すると同時に大損も避けつつ、企業本来の長期的な価値創造の一部を享受することに他ならない。

日本は人口が減るのに、株価が上がるのはなぜ?

ところで、日本では人口減少と一層の高齢化が確実視される中で、なぜ日経平均が値上がりすると考えて良いのか不思議に思った読者もいるだろう。セミナー等でも同様の質問をよく受ける。その質問に答えよう。

まず、日本企業の多くは海外で稼ぐようになった。欧米などの先進国にとどまらず、アジアやアフリカなど新興国への進出も目覚ましい。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、日本企業の海外売上高比率は2000年度に3割に満たなかったが、2017年度には6割程度に増えた。海外で稼いでいるのだから、国内の人口減少を理由に日本株市場の先行きを悲観するのは大間違いだ。

もうひとつ、日経平均の採用銘柄が定期的に入れ替わることも重要なポイントだ。日本経済新聞社が"各業種の代表選手"として採用銘柄を選ぶときに、株式市場で活発に取引されているかが重視される。その結果、衰退企業は自動的に日経平均から除外され、代わりに人気銘柄が補充される。

定期的なメンテナンスによってクオリティが維持される仕組みも、日経平均の長期的な上昇を支えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、米「相互関税」は即時発動せ

ワールド

ロシアのG7除外は誤り、トランプ氏「復帰を望む」

ワールド

トランプ氏、USスチールと会談へ 「鉄鋼関税で力強

ワールド

トランプ氏、「相互関税」導入を表明 数週間以内に発
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザ所有
特集:ガザ所有
2025年2月18日号(2/12発売)

和平実現のためトランプがぶち上げた驚愕の「リゾート化」計画が現実に?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 2
    【徹底解説】米国際開発庁(USAID)とは? 設立背景から削減議論まで、7つの疑問に回答
  • 3
    吉原は11年に1度、全焼していた...放火した遊女に科された「定番の刑罰」とは?
  • 4
    【クイズ】今日は満月...2月の満月が「スノームーン…
  • 5
    夢を見るのが遅いと危険?...加齢と「レム睡眠」の関…
  • 6
    イスラム×パンク──社会派コメディ『絶叫パンクス レ…
  • 7
    終結へ動き始めたウクライナ戦争、トランプの「仲介…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    【クイズ】アメリカで「最も危険な都市」はどこ?
  • 10
    便秘が「大腸がんリスク」であるとは、実は証明され…
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だった...スーパーエイジャーに学ぶ「長寿体質」
  • 3
    Netflixが真面目に宣伝さえすれば...世界一の名作ドラマは是枝監督『阿修羅のごとく』で間違いない
  • 4
    研究者も驚いた「親のえこひいき」最新研究 兄弟姉…
  • 5
    メーガン妃の最新インスタグラム動画がアメリカで大…
  • 6
    戦場に響き渡る叫び声...「尋問映像」で話題の北朝鮮…
  • 7
    2025年2月12日は獅子座の満月「スノームーン」...観…
  • 8
    iPhoneで初めてポルノアプリが利用可能に...アップル…
  • 9
    「だから嫌われる...」メーガンの新番組、公開前から…
  • 10
    極めて珍しい「黒いオオカミ」をカメラが捉える...ポ…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 9
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中