マネーロンダリング疑惑に揺れる北欧金融モデル 信頼前提の制度破綻
当局の動き
デンマークでは資金洗浄疑惑を受けて現在の右派連立政権への批判が高まり、6月までに実施予定の総選挙で左派の野党勢力が政権を奪取する可能性もいくつかの世論調査で示されている。
こうした中でデンマーク政府は、資金洗浄の取り締まりに従事する部門の人員を倍増し、同部門に違反者への制裁金を科すことや立ち入れ検査を行う権限を認めるなど積極的な対応に乗り出した。ヤルロブ産業・金融相は、米国型の管理態勢にシフトすると表明した。
スウェーデンもこれに追随するかもしれない。ロベーン首相は先週、規制当局の態度が生ぬるいとの批判を受け、規制強化に向けた法制化に動く可能性があると語った。
同国の場合、昨年には金融監督庁の担当部門が複数の大手銀行の資金洗浄対策が不十分なので制裁措置を打ち出すべきだと提言したものの、首脳部が警告書を送付するだけにとどめたというケースが見られた。また金融監督庁は、中央銀行から規制が甘すぎると苦言を呈された後、銀行の住宅ローンの引当金に関するルールの厳格化も迫られた。
トランスペアレンシー・インターナショナルのルイーズ・ブラウン氏は、スウェーデンは改革を必要としており、規制の執行と企業統治の両面で改善しなければならないと主張している。
今回の資金洗浄疑惑では、当局と監督対象銀行の距離が近すぎるのではないかという問題も浮上してきた。
デンマークの前金融監督庁長官はかつて、2016年の就任前に5年間、ダンスケ銀で最高財務責任者(CFO)を務めていた。同国は現在、金融監督庁長官と副長官に過去5年間金融機関で働いていた人物を起用することを禁じている。
(Johan Ahlander、Esha Vaish、John O'Donnell記者)
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