iPhone 6s、中国人は「ローズゴールド」がお好き
メンツ消費ゆえの人気色から、誰の指でもOKの指紋認証付きニセモノまで、新型iPhone発売の中国的お祭り事情
本物より早く 深圳ですでに発売されていたニセモノのiPhone 6s(左、販売価格は約1.1万円)とiPhone 6s Plus(約1.2万円) REUTERS
今や年に一度の世界的なお祭りとなったアップルの新型iPhone発売日だが、iPhone 6sとiPhone 6s Plusの発売がいよいよ明日に迫った。中国でも米国や日本と同じタイミングで発売される。毎年似たような騒ぎが繰り返されるだけに、原稿を使い回してもバレないのではないかと邪心がよぎるほどの定番イベントだ。来年以降もしっかりと使い回せる、永久保存版の原稿をお届けしたい。
行列
毎年最大の話題となるのが発売日前の行列だ。数日前から行列を作るという強者までいるほか、中国の転売業者が学生やホームレスを動員して行列代行をさせるといった騒ぎもあったほど。中国のアップルストアではもっと大胆な行動に出る者もいた。専用バスで乗り付け、目印となるおそろいの黄色い帽子をかぶった行列代行のアルバイトが集結したのだ。列に割り込もうとして一般購入者との間で一触即発の事態になったこともあった。
今年はウェブでの事前予約が必須となり、中国でも他国と同時発売されるため、行列を作る必要性は少なそう。それでも一部では、一刻も早く手に入れたい熱烈なファンが列をなしているようだ。
ニセモノ
中国iPhone事情といえば欠かせないのがニセモノだろう。ニセモノ業者も年々レベルアップしている。外見が本物そっくりなのは当然として、操作画面もiOSそっくりにカスタマイズされたアンドロイドを搭載している。また、アップルが販売していない、握りしめられるぐらいの小ささの小型ニセiPhoneまで存在する。
今年もすでにニセiPhone 6sが中国最大の電脳街、広東省深圳市の華強北路に登場している。香港紙の報道によると、ニセiPhoneとして初めて指紋認証機能を搭載した機種まで登場したという。ただし指紋認証とは名ばかりで、誰の指を押し当てても反応する代物で、セキュリティの意味はまったくないのだとか。それでも人前で使って自慢するには十分といったところか。
人気色
中国では、昨年発売されたiPhone 6は新色「ゴールド」が人気だった。自慢屋の成金を意味する「土豪」という言葉と組み合わせ、「土豪金」という名前が付けられている。プレミア価格がつくほどの人気で、別色のiPhoneをゴールドに塗装してくれるサービスが登場するほどだった。
黄金大好きの中国人をターゲットとしたカラーだけに、今年もゴールドが売れ筋かと思いきや、人気は新色「ローズゴールド」に集中しているという。iPhone 6s購入を考えている複数の中国人にヒアリングしたところ、やはり狙いはローズゴールドだった。その理由は「一目で6sと分かってもらえるから」というもの。新機種を買ったことを自慢したいという需要が根強いわけだ。
これを中国では「メンツ消費」という。自分に合ったものかどうか、必要なものかどうかではなく、ともかく人に自慢できるものが欲しいという考え方である。最近では「豊かになるにつれ、中国人の消費スタイルも成熟し、自分に合ったもの(中国語で個性化)を求める動きが強まってきた」などと解説されることも多いが、メンツ消費はまだまだ根強いようだ。