最新記事

ギリシャが緊縮策を大差で拒否、債権団との溝深まる

ユーロ圏当局者は近いうちの交渉再開に難色を示す

2015年7月6日(月)18時00分

6月5日、EUが求める緊縮策の是非を問うギリシャ国民投票は、予想以上の差で受け入れ拒否が優勢となっている。 写真は国民投票に参加するために投票所に到着した同首相(2015年 ロイター/Alkis Konstantinidis)

[アテネ 5日 ロイター] - 欧州連合(EU)が求める緊縮策の是非を問うギリシャ国民投票が5日行われ、予想以上の大きな差で受け入れを拒否した。ユーロ圏への残留がさらに不透明になり、債権団との溝も深まっている。

欧州連合(EU)のトゥスク大統領は、ギリシャ問題を協議するため、7日にユーロ圏首脳会議を招集した。

ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のデイセルブルム議長の報道官は、7日のユーロ圏緊急首脳会議の前に、首脳会議の準備のための会合を開催すると表明した。

欧州中央銀行(ECB)は6日午前に理事会を開く予定。関係筋によると、ギリシャの銀行向け緊急流動性支援(ELA)は現行の水準に維持される見通しだ。

アジア市場では序盤の取引でユーロが下落、株も下げた。JPモルガンはリサーチノートで「情勢は流動的だが、現時点でギリシャのユーロ圏離脱の可能性が高まったようだ」と指摘した。

銀行破綻も視野

緊縮策が拒否されたことで、ギリシャ情勢が混迷の度を増すことは必至。ユーロ圏内での政治・金融面での立場が危うくなり、支援を受けることができなければ銀行破綻も視野に入る。ギリシャ政府は年金や公務員の賃金を支払うために、別の通貨を発行する必要に迫られる可能性もある。

開票では61%が反対となり、首都アテネ中心部の議会前にあるシンタグマ広場には、多くの市民が集まり、クラッカーを鳴らして喜びを表した。

教師のスタティス・エフティミアディス氏(47)は「『ノー』というメッセージは、欧州や国内からの圧力をわれわれが恐れていないことを示すものだ。われわれは欧州内で公平かつ自由に生きることを望んでいる」と述べた。

学生のネフェリ・ディモウ氏(23)は「今回の結果は力強い交渉力となり、欧州の人々はギリシャが植民地ではないことを理解するだろう」と語った。

強気のチプラス首相

同国のチプラス首相は、緊縮策受け入れが拒否されたことを歓迎し、休業中の銀行再開に向けて債権団と直ちに交渉を再開する用意があると述べた。

首相はテレビ演説で、今回の国民投票がユーロ圏在留の是非を問うとの見方を否定。「現在の困難な状況のなか、国民は勇気ある選択をした。国民の負託は欧州との決裂ではなく、実行可能な解決策に向けた交渉力を強めるものだと認識している」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中