ギリシャが狙う「アイスランド型デフォルト」とは何か
ギリシャ与党の一部から「痛みの少ない」デフォルトを模索する無責任な動きが
綱渡り 債権団とのぎりぎりの交渉に奮闘するギリシャのツィプラス首相 Alkis Konstantinidis-REUTERS
ギリシャの与党・急進左派連合(SYRIZA)内の極左グループが、デフォルト(債務不履行)と国内銀行の国有化を画策し始めた。
極左「左翼プラットフォーム」のメンバーが、数日内に「アイスランド型デフォルト」を提案するという極秘プランを、英紙デイリー・テレグラフが報じた。同案は、SYRIZAの総議席数の5分の1にあたる30人超の議員の支持を得ているという。
アイスランドでは2008年、国内銀行がGDP(国内総生産)の10倍にも膨らんだ対外債務の返済に窮し、国家破綻に陥った。しかし、そこからアイスランド経済は急回復し、2011年以降は毎年プラス成長を遂げている。今年の経済成長率も3%に達する見込み。ギリシャもこれを真似よう、というわけだ。
アイスランドとは事情が異なる
もしギリシャがアイスランド型デフォルトを望むなら、間違いなくユーロ圏からは離脱して、ユーロ以前の自国通貨ドラクマに復帰することになる。
ECB(欧州中央銀行)に代わる独自の中央銀行を創設し、不良資産も買い取らせる。いわゆる「バッドバンク」だ。汚い物も中央銀行に預けてしまえば、市場の不安要素は取り除かれ、金融システムも正常化する、という寸法だ。
だが、アイスランドとギリシャの間には大きな違いがある。アイスランドには、もともと独自通貨のアイスランド・クローナがあった。輸出競争力を高めるために、通貨の一層の切り下げという手が使えたのだ。
アイスランド・クローナは今でも金融危機以前の水準より30%安く、輸出は2007年末より10%増えた。ギリシャと同じく重要な産業である観光は特に好調で、2008年から2014年にかけて外国からの訪問者数は30万人増加した。
財政緊縮が不要になるわけではない
だが、アイスランド型デフォルトをしたとしても、ギリシャに厳しい財政緊縮が必要なことには変わりがないと、ロンドンの政策シンクタンク「オープン・ヨーロッパ」の共同ディレクター、ラウル・ルパレルは言う。