TPP合意に立ちはだかる最大最強の「障壁」
大統領選出馬のヒラリーが豹変? 国務長官時代に推進した協定に不支持をにおわすが
ヒラリーはTPP反対派の期待に応えて合意阻止に立ち上がるのか Joe Raedle-Getty Images
米議会の与野党幹部は先週、TPP(環太平洋経済連携協定)を大きく進める貿易促進権限(TPA)法案を共同で提出した。法案が可決されれば、オバマ大統領は通商交渉で強い権限を手にする。議会は、大統領が他国と結んだ貿易協定に賛成か反対かの判断を示すことしかできず、個別の修正を求めることができなくなるのだ。
難航してきたTPPが、ようやく合意に向けて弾みがついた──かに見えた。ところが、来年の大統領選出馬を表明したクリントン前国務長官はTPPに対するこれまでの積極的な立場を修正し始めている。陣営の広報担当によれば、クリントンはTPPへの賛否を決めかねているという。
以前、クリントンはTPP推進を明確に示していた。12年11月、オバマ政権の国務長官を務めていた当時、こう述べている。
「2国間の協定やTPPのような多国間の協定を推し進めていく必要がある......TPPは、自由で透明で公正な貿易への道を開き、法の支配と公正な競争環境を実現する貿易協定としてお手本になるだろう。交渉がまとまれば、参加国で世界の貿易の40%を占めることになり、労働者と環境の保護が強化される」
ところが先週、クリントン陣営の広報担当を務めるニック・メリルはニューヨーク・タイムズ紙に対し、クリントンがTPPを支持しない可能性があるとにおわせた。進歩派の議員や活動家の間では、TPPが国内の雇用を破壊し、大企業に不当に大きな力を与えると懸念する声が少なくない。
貿易協定で「変心」の前歴
「いかなる新規の貿易協定も2つの条件を満たすものでなくてはならないと、クリントンは考えている」と、メリルは述べる。
「第1は、アメリカの労働者を守り、賃金を引き上げ、国内に良質の雇用を増やすこと。第2は、アメリカの安全保障を強化すること。これらの条件を満たせなければ、交渉の席を立つべきである。アメリカの人々の豊かさと安全を高めることが目的であって、貿易のための貿易であってはならない」