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アジア経済

駆け込み申請でAIIBに40カ国以上が加盟

多国籍な金融機関を作ろうという中国の姿勢は本物なのか

2015年4月1日(水)13時39分
コナー・ギャフィー

駆け込み申請 アメリカと日本はお呼びでない(昨年10月のAIIB発足調印式) Takaki Yajima-Pool-Reuters

 中国が設立を主導する国際金融機関「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」の加盟申請の締め切り日だった3月31日に向けて、各国の駆け込み申請が相次いだ。

 当日最後に申請したのはノルウェーと台湾だった。スウェーデン、ロシア、デンマーク、オランダも先週末以降のギリギリのタイミングで申請した。

 北京に本部が置かれるAIIBの設立メンバーとして参加を表明したのは、最終的に40カ国以上となった。アメリカは参加を拒否し、日本も申請を見送った。

 イギリス、ドイツ、フランスは、アメリカの反対を押し切って加盟に動いた。アメリカは、AIIBの各種基準や運営面に懐疑的な見方を示している。

 ワシントンの政治コンサルタント「ユーラシア・グループ」の上級アナリスト、エリカ・ダウンズは、アメリカの懸念には根拠がない、と言う。AIIB構想を進める設立準備委員会のトップが、アジア開発銀行(ADB)の元副総裁、金立群(チン・リーチュン)ということもあるからだ。

「これまで見てきた限り、AIIBは本気で多国籍な組織を作ろうとしている。外見だけ多国籍に見せかけた中国の銀行、ということではない」とダウンズは話している。「世界銀行やADBの経験者を積極的に登用しようとしているのも、適正にやっていきたいという兆候に見える」

 ダウンズは、AIIBを主導する中国政府の決断の背景には、明らかに政治的な理由があると言う。中国政府は、設立資金として500億ドルの提供を表明した。

「中国は国際金融システムの中でもっと影響力を持ちたいと考えている。今日の世界の勢力バランスをもっと反映して国際金融システムが再構築されるべきだという考えは、世界トップの経済圏である中国としては当然の思惑だ」と、ダウンズは話している。

 ワシントンの疑念を払拭する1つの方法としてダウンズは、様々なプロジェクトに対して世界銀行やADBと共同出資することを提案している。

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