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世界経済

日本の次はユーロ圏をデフレが脅かす

IMFが目を光らせる「ディスインフレ」という新たなリスク

2014年2月3日(月)14時43分
アンソニー・フェンソム

春はまだ遠い 南ヨーロッパの需要不足が欧州経済の足を引っ張りそうだ Kai Pfaffenbach-Reuters

 IMF(国際通貨基金)によると、世界経済は復活しつつあるらしい。例えば、日本は15年間にわたったデフレとの戦いでようやく成果を上げ始めている。一方で、今度はヨーロッパがこの恐るべき病魔に感染するかもしれないと、IMFは警告する。

 IMFが先ごろ発表した世界経済見通しの中で、昨年3・0%だった世界経済の成長率が今年はほぼ2年ぶりに3・7%へと拡大、来年には3・9%に加速すると予測した。

「成長の抑制要因が弱まってきた」と、IMFのチーフエコノミスト、オリビエ・ブランシャールは言う。「財政緊縮も最悪期を脱し、金融システムも徐々に健全化しつつある」

 IMFによれば、世界経済は先進国の需要増で昨年後半から活発化した。途上国も内需は振るわないが、輸出は好調だ。

 全体としては楽観的な見通しながらも、IMFは先進国が「ディスインフレ(インフレとデフレの間の状態)という新たなリスクに直面している」と警告した。インフレ率は予想を下回る状態がしばらく続くだろうと予測する。そのせいで将来のインフレ期待が下がれば、実際のインフレ率はさらに低下して成長を阻害し、ひいてはデフレを招くという。

ユーロ圏の域内ギャップ

 IMFは先進国の中でも、2つの国・地域でのデフレの動向に注目している。

 まずは日本だ。その理由は、デフレ脱却に相当てこずったこと。だがアベノミクスで景気が上向いてきた日本が再びデフレに陥る心配は比較的少ないという。「『2年以内に2%』というインフレ目標を達成できるかは分からないが、インフレ率はプラスで推移するとみている」と、ブランシャールは言う。実際、日本銀行は先ごろ、インフレ率は今年度の1・3%に続き、来年度は1・9%との見通しを示した。

 日本よりも心配なのはユーロ圏だ。ユーロ圏の中核部は景気回復しているが、南部は依然として需要が弱い。市場の予想インフレ率を測る新たな指標「インフレスワップ」の値を見ても、これらの国ではインフレ率がマイナスになる可能性が10〜20%あるという。

 アジア諸国も例外ではない。外国投資への依存から抜け出せない中国や資金逃避リスクを抱える東南アジア諸国など世界経済を脅かす懸念は消えていない。景気回復を祝うのは、もう少し待ったほうが良さそうだ。

From thediplomat.com

[2014年2月 4日号掲載]

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