最新記事

米中関係

スパイ疑惑の中国企業、米市場撤退の真意

2013年12月19日(木)13時17分
シャノン・ティージ

 ファーウェイはスパイ疑惑を再三否定してきた。下院情報特別委員会の報告書に関しては、「結論が先にありき」だと不満を述べ、同委員会の動きを保護貿易主義と批判。ヘイデンの発言も「根拠なき中傷」と切り捨てた。その一方で、同社はイメージ改善のためにロビイストを雇ったり、米議会スタッフを中国の工場に招いたりしてきた。

 しかし、逆風はやまなかった。アメリカの同盟国であるオーストラリアとカナダは、安全保障上の懸念を理由に、国家の通信事業から同社を締め出すことを決定。この11月末には、韓国企業が同社との契約を決めたことを受けて、2人の米大物上院議員が国防長官、国務長官、国家情報長官に書簡を送り、米韓同盟の「運用上の有効性」を損ないかねないと懸念を伝えた。

 ただし、ヨーロッパではかなり事情が違う。ファーウェイは欧州で既に強固な足場を築いている。アメリカの強力な同盟国であるイギリスでも大型拠点の開設が認められそうだ。同社幹部がチャイナ・デイリー紙に語ったところでは、現在の7500人余りのヨーロッパにおける従業員数を、5年でさらに5500人増やす計画だという。

 ヨーロッパだけではない。同社はアフリカ市場でも大きなシェアを獲得しており、さらに成長を続けている。

 アメリカ市場からの撤退は、同社の弱さではなく、強さの表れとみるべきなのかもしれない。巨大な市場から締め出されても、世界でビジネスを拡大させていく自信があるのだろう。

From thediplomat.com

[2013年12月17日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中