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債務危機アイルランド、国家存続の瀬戸際へ
08年に国家破綻したアイスランドとアイルランドの違いは「ス」か「ラ」の違いだけ、というジョークが現実に
厳冬を待つ 政府に国を救えると思う国民はごくわずか(10月2日、ダブリン) Cathal McNaughton-Reuters
アイルランド国民は、08年に銀行危機で国家破綻したアイスランドを横目で見て、自分たちの経済ははるかにましだと信じてきた。だが今や、両国の違いは国名の「ル」か「ス」の一文字だけだ、というジョークが現実になろうとしている。
「アイルランドの借金返済能力に対する投資家の信頼は、失われたも同然だ」と、アイリッシュ・タイムズ紙のエコノミスト、ダン・オブライエンは言う。アイルランド危機の原因は、不動産バブルの崩壊で不動産開発業者に対する融資に巨額の焦げ付きが発生したことだ。
危機はこの数週間で一気に深刻化し、この国は「ひっそりと独立国として存在することをやめ、欧州中央銀行(ECB)の後見を必要とする存在になった」と、アイルランド国立大学ダブリン校の経済学教授、モーガン・ケリーは言う。
確かに、アイルランドにはアイスランドにない強みがあるはずだった。2011年半ばまでは財政を切り盛りしていけるだけの準備金があることと、アイルランドはユーロ圏の一員なので、他のユーロ諸国もその破綻を何としてでも回避しようとすることだ(現にアイルランド危機が表面化して以降、ポルトガル、スペイン、イタリアは既に海外での債券発行が難しくなっている)。
だが今や、アイルランドの銀行の損失の穴埋めに必要な資金は、政府の財源をはるかに超えてしまったと、モーガンは言う。住宅ローンの焦げ付きも今後さらに大量発生するだろう、と彼は予測する。
アイルランドは、11年まで国際市場での資金調達を中止することに決めた。借り入れコストがアイルランド史上で最高の9%に跳ね上がったからだ。多くのアナリストは、アイルランドとポルトガルは、欧州金融安定化基金の救済を受けるしかなくなるだろうと見ている。5月のギリシャ危機をきっかけにEU(欧州連合)とIMF(国際通貨基金)が設立した7500億ユーロの基金だ。
ギリシャの二の舞はいやだ
アイルランド政府は、支援を受けたためにIMFの緊縮プログラムを押しつけれているギリシャの二の舞を避けるには、自ら支出削減と増税を主導する以外にないと必死の努力を続けてきた。12月に出す予算案は、赤字削減規模60億ユーロという同国史上で最も厳しいものになる予定だ。
「我々には国を持続させ信用を維持する力がある」と、ブライアン・レニハン財務相は言う。
だが社会の安定に対するコストは小さくないかもしれない。政府は、政府の「無能」に怒った国民の抗議デモを予期している。11月3日には、大学の授業料値上げに抗議する学生と警官隊がダブリンで衝突し、負傷者を出す騒ぎもあった。
ブライアン・カウエン首相率いる連立政権にとってさらに困ったことに、政府は11月25日までに補欠選挙を行わなければならない。もし最大与党の共和党が事前の予想どおり敗北すれば、カウエンは国民の猛反発必至の緊縮予算案を成立させるために、数えるほどの独立系議員に頼らなければならない。
どう転んでも、アイルランドを待っているのが最悪の冬なのは間違いない。